第62話 お茶会の後の王宮にて
リアとヘンドリックが帰り、ルーファスも公爵家の馬車で王宮を去った後、クリスとジークフェルドは王妃の部屋に呼ばれた。
「二人共ありがとう。ようやくリアに会えたわ。」
エミリアは嬉しそうだ。
「母上に喜んでもらえて良かったです。本物の母娘の様でしたよ。」
クリスも微笑んだ。
「まあ、本当?あの子の名前は、私の名前からとったのよ。まるで本物の親子のようでしょ。」
「そうなんですか?」
それはクリスも初耳だ。
「カイルが言ってたもの。」
カイルとはリアの父親であるアーロン男爵だ。
ユーフェミア達はグラース三世に見つからないよう、細心の注意を払って生活していた。
エミリア王妃がアーロン領のオレンジが好物だと公言し、オレンジを献上するという名目でカイルが、毎年近況報告と妻からの手紙を届けていたのだ。
「ジーク。お兄様はリアをどう扱うおつもりなの?私、あの子と会って、彼女を王族に迎え入れたいと思ったわ。今日も何度、私はあなたの伯母なのと打ち明けたかったことか・・・。」
「父上からはリアの様子を見て、本人の希望に沿った人生を送らせてあげなさいとしか。」
それを聞いてエミリアは表情をくもらせた。
「あの子の瞳をちゃんと見たことはあるかしら?あれはリンドブルムゴールドよ。」
「!」
クリスとジークフェルドが息をのんだ。
リンドブルム王国の建国に関わった初代国王は珍しい金の瞳の持ち主だった。
琥珀のような透明感のある黄色の中に、キラキラと輝く金色の粒が散りばめられたような瞳のことを初代にちなみリンドブルムゴールドと呼んでいるのだ。
日をあびると、角度によっては黄金のように輝くその瞳はリンドブルム王族の象徴であったが、近年あまりその瞳を持つ者が生まれなくなってきたのだ。
「リアの瞳は茶金かと・・・。」
ジークフェルドがつぶやいた。
「ユーフェミアも幼い頃は茶金だったわ。初潮をむかえたあたりから金色の色味が濃くなってきて2,3年で瞳の色が変化したの。グラース三世があの子を王妃に望んだのは、容姿が気に入ったということの他にも瞳のことがあるんじゃないかって、お兄様はおっしゃってたわ。」
「リンドブルム王族の象徴である黄金の瞳をグラシアス帝国に取り込みたいということですか?」
クリスの言葉にエミリアは頷いた。
「両国間で有事が起こった際に、金の瞳を受け継いだグラシアスの皇帝がいれば、リンドブルムを攻略する正当な理由にできるもの。」
「そんな自分が死んだ後の世代のことまで・・・。グラース三世はとんだ野心家ですね。」
ジークフェルドが吐き捨てるように言った。
「お兄様に連絡をとるわ。一度、お兄様にもリアを会わせた方がいいと思うの。その上でカイルも交えて今後のことを相談するべきだわ。」




