第60話 王子たちのお茶会
最後の一言はヘンドリックにしては辛らつな言葉だった。
3人は黙って聞いていたが、その言葉にクリスが口を開いた。
「一度、自分を解放してみたらどうだい?アンドレアから何か言われることがあれば、僕が守ってあげるよ。」
「しかし・・・」
とまどうヘンドリックにルーファスが声をあげた。
「ずっとそうやって逃げ続けるのなら、私がおまえをいじめてやろうか?そういう逃げ回るような奴は大嫌いなんだ。」
それは真剣にテストを受けても、受けなくても誰かがヘンドリックを虐めるということか。
ルーファスはそう言って背中を押してくれただけかもしれないが。
ヘンドリックは心を決めた。
ここに連れてこられた時点で、もう選択肢は一つだったのだ。
「わかりました。次のテストは全力でのぞみます。」
「話がまとまったのなら、お茶しようぜ。お茶会なんだろ。一応。」
ジークフェルドはやれやれという風に肩をすくめ、クッキーをつまんだ。
今回はジークフェルドも、あとの二人に巻き込まれただけなのだろう。
ヘンドリックはクスっと笑って、ようやくお茶に手をのばしたのだった。
緊張もとけ、用意されたお菓子も半分ほどになったころ、ジークフェルドが尋ねてきた。
「ヘンドリックはいつ、リアの事情に気が付いたんだ?」
いつだろう・・・。
ヘンドリックは少し悩んでから答えた。
「はじめに疑問を感じたのは、エリザベス様が生徒会室に来られた時でしょうか。いくら生徒会役員として身なりを整えさせるといっても、初対面の男爵令嬢を公爵家に連れて行ってあそこまで面倒をみられたことに違和感を感じました。」
「まあ、それはそうかもな。あれはクリスが頼んだんだ。」
ジークフェルドも納得している。
「それが確信に変わったのは、ルーファスとリアちゃんが出産祝いを買いに行ったことを聞いた時です。トルドー公爵はかなりの血統主義と聞いてましたので、ルーファスが意味もなく彼女にあのような高価なプレゼントを渡すはずがないと。」
「だよなあ。」
ジークフェルドはおかしそうに笑った。
「普通はあんなプレゼントをもらったら裏心があると察しそうなものなのに。リアのやつ、失くしたら大変だからって金庫にしまっとくなんてな。おまけに保健の教師に値段を聞いてから鍵を2個にしたって言ってたぞ。」
ジークフェルドの言葉にルーファスはムッとしたような表情になった。
「まあ、アクセサリーを受け取ってもらってるだけ、私が一歩リードしてますがね。」
「なにっ。」
ジークフェルドがルーファスを睨みつける。
空気が悪くなりかけた瞬間、クリスが立ち上がり窓際に行った。
「ほら、見てごらん。ここから、あの東屋が見えるんだよ。」
他の3人も立ち上がり、窓をのぞくとリアがエミリアと楽しそうに話しているのが見えた。
「リアのやつ、あんなに緊張していたのに、すっかり叔母上と打ち解けているな。」
ジークフェルドが呆れたようにつぶやいた。
「リアちゃん、大物ですね。」
ヘンドリックも感謝している。
ルーファスは無言で東屋の二人を見つめていた。




