第44話 文化祭
クラウハルト王国には二人の王女がいた。
姉のイリスは強く美しい世継ぎの騎士姫として、その名を近隣の国々にとどろかせていた。
一方、年が離れて生まれた妹姫エミーリアは可愛く愛らしい姫で、姉は妹姫を目に入れても痛くないほど可愛がっていた。
王城の訓練場で、イリス王女が近衛騎士たちと訓練に参加していた。
カンカンカーン
将来、騎士を目指している男子生徒たちとイーリスとの剣舞が始まった。
「すごい迫力だね。」
イリスの剣舞を見てクリスが感嘆の声をあげた。
「ああ、女だなんて思えないな。」
ジークフェルドもクリスに同意した。
身長も周囲にいる男子生徒と変わらず、身のこなしもしなやかで、本物の騎士姫といわれても全く違和感がない。
リアはこんな男みたいなデカい女と剣を交えていたのか?
驚きだ。
そして、イリスの剣の練習が終わり、王城の中の部屋へと場面がうつっていく。
カチャ
イリス姫が、舞台の右手に設置された扉を開け『エミーリア』と妹姫の名前を呼んだ瞬間、それまで暗がりになっていた舞台の左手にスポットライトが当てられた。
会場がざわついた。
”誰あの子?”
”あんな可愛い子、新入生にいたか?”
客席からそんな声があがった。
スポットライトの先には妹姫エミーリアが座っていた。
ピンクのフワフワしたドレスを身にまとい、金の髪はゆるくウェーブされ、瞳はライトを浴びキラキラと金色に輝いていた。
ソファに腰掛け、本を読んでいるようだ。
『イリスおねえさま』
顔をあげたエミーリアはふんわり笑い、姉の名を呼んだ。
「うわっ。めっちゃ、可愛い。」
生徒会メンバーのすぐ後ろに座っていた男子生徒が声をあげた。
それを聞いてジークフェルドは自分の心を言い当てられたような気がした。
ユーフェミア叔母上・・・。
ドレスをまとい薄く化粧をほどこされたリアは、父の部屋にある叔母の肖像画にそっくりだった。
「まずいな・・・。」
そう発言したのはルーファスだった。
またもや自分の気持ちを言い当てられたのかと思い、ジークフェルドはドキッとした。
「リアの可愛さが認知されてしまう・・・。」
ルーファスの言葉に、ジークフェルドも心の中で賛同した。
劇を見て、アーロン男爵家への婿入りを希望する男子生徒が現れる可能性は十分ある。
ジークフェルドは憮然とした表情で目の前の舞台に目を向けた。
『ああ、私の可愛いエミーリア。剣の練習が終わったから、約束していた通り絵本を読んであげよう。』
イリス王女は妹の側に歩み寄ると、横に腰かけ絵本を読み始めた。
エミーリアは甘えるように、姉にもたれかかり、絵本を見ている。
姉も時おり愛おしそうに妹の方を見ながら絵本を読んであげている。
仲が良く、幸せな姉妹であることが、よく伝わってきた。




