第41話 ルーファスとのお買い物
「リアは美味しそうに食べるな。」
ルーファスが淡く微笑みながら話しかけてきた。
「先輩、今日はなんか少しいつもと違う気がします。」
リアはルーファスの笑顔に、何となくそわそわしてしまった。
「そうか?どこが?」
「うーん。いつもより優しいというか、甘いというか。いえ、いつも優しいんですけど、今日が特に・・・」
何がどうとか言葉に出来ず、リアは語尾が小さくなった。
「好きな子とデート出来て舞い上がってるのかもしれないな。」
「!」
リアは驚いてルーファスの顔を見た。
彼は甘く微笑んでリアを見つめていた。
今の、どういうこと・・・?
リアは混乱していた。
なぜならリアが役員に選ばれて、わりと間もない頃にルーファスから言われたのだ。
”君が男爵令嬢で残念だよ。性格もいいし仕事もできて、リアがうちに嫁いでくれたら領地経営を半分手伝ってもらえて、私も文官として自由に働けそうなのに。”
それは、つまり身分が自分に釣り合わないから自分を好きになるなよ、という意味だとリアは解釈したのだ。
リアも公爵家の息子を婿に取るつもりはなかったので、その言葉に腹が立つでもなく全く同感だった。
”私も似たようなこと思ってました。ルーファス先輩がうちに来てくだっさたら、領地のあれこれを立て直してくれてアーロン領が豊かになりそうって。お互い、残念ですね!”
それから二人でアハハハと笑い合い、その話は終わった。
それ以来、二人はただの生徒会の先輩と後輩として、良好ながらも淡々とした関係を維持してきたのだ。
お父さまが、特に身分差にうるさいっておっしゃってたし、もしかして今の発言に深い意味はないのかな?
きっと、そうね。
リアは自分に言い聞かせ、目の前のお菓子に集中することにした。
「またまた、先輩。ややこしい冗談はやめて下さい。一瞬、本気にしちゃいそうになりました。パイが冷めてしまうから早く食べましょう。」
ルーファスは渾身の告白を華麗にスルーされ、笑顔で食べ物に集中し始めたリアを残念そうな表情で見た。
そして、諦めてパイに手を伸ばしたのだった。
※
学院まで送ってもらい、ルーファスと別れた後も、リアはなんとなくずっとモヤモヤしていた。
しかし、夜になり布団の中で今日の出来事を思い返し、自分の中で結論づけた。
きっとエリザベス様と同じで、金持ちの道楽ね。
気に入った後輩を可愛がってあげましょうってことなんだわ。
その可愛がるレベルがあまりに高すぎるから、私がドキドキしちゃっただけで・・・。
明日からルーファス先輩とは普通に接しよう。
おやすみ、私。
こうしてリアはスヤスヤと眠りの世界へと渡っていったのだった。




