第38話 ルーファスとのお買い物
気付けば、リアは生徒会室から連れ出され、トルドー公爵家の馬車に乗せられていた。
装飾の多かったエリザベスの馬車と違い簡素なつくりだが、内装に使われている暗色調の木材は高級そうだし、緑色のビロードがはられた座席はとても座り心地が良かった。
リアは物珍しげに馬車の内装を眺めまわした。
「何か気になるのか?」
ルーファスに尋ねられ、リアは思っていることをそのまま伝えた。
「エリザベス様の馬車と違って装飾は少ないんですが、使われている木材が重厚な雰囲気でこれもいいなあって思ってたんです。」
「これは紫檀を使っている。うちの領地の特産品のひとつだ。特産品を使えば、領地でも喜ばれるし、王都で馬車を使えば特産品のアピールにもなるだろう。」
なんという徹底的な合理主義。
さすが、ルーファス先輩のおうちね・・・
リアは感心して頷いた。
「なるほど、宣伝にもなるんですね。うちもオレンジの木で馬車を作ってみようかしら?それとも外側をオレンジ色に塗るとか・・・?」
それを聞き、ルーファスが笑った。
「馬車の外壁をオレンジ色にする案は、いま一つだな。でも。良いと思ったことをすぐに取り入れようとするのはリアのいいところだ。」
「ありがとうございます・・・。」
今日のルーファスはよく笑うし、いつもと何か違う気がする。
そわそわしながら、リアは馬車の小窓から外を眺めた。
あれ、ここ、もしかしてミント大通り?
アルノー王国の王都の中でも、ミント大通りといわれる一番太い通りが、様々な高級店やレストランが建ち並ぶ中心街となっているのだ。
「先輩。もしかしてお買い物ってミント大通りでするんですか?」
リアは青ざめた。
財布には、今2000ガロしか入っていないのだ。
寮には朝食と夕食はついているが、昼は学食か購買で買って食べている。
そして、学食の一食分がだいたい500ガロである。
その昼食代の他にリアが貰っている1か月のお小遣いは20000ガロだ。
女の子用品を買ったり、週末に友達と出かけたり、たまには服を買ったりするとカツカツなのである。
出産祝いって、いくらぐらいするのかな?
先輩と折半しても、ミントのお店なんて高そうだなあ。
1万ガロのものを贈るとしても、リアの支払いは5000ガロになる。
昼食10回分かあ。
痛いなあ・・・。
「そのつもりだが、何か問題があるのか?」
ルーファスに聞かれ、リアは正直に答えた。
「今、お財布に2000ガロしかなくて・・・。あの、後日お返しするので、お金を借りてもいいですか?」
申し訳なさそうに答えるリアに、ルーファスはフッと笑みを浮かべた。
「私から提案したんだ。お金は私が払うよ。リアは選ぶのを手伝ってくれたらいい。」
大変ありがたい申し出だが、二人からの贈り物なのに1ガロも払わないのもどうかと思った。
「でも・・・。」
「そんなに気になるなら、今度、学食を一回おごってくれたらいい。」
「それでいいんですか?」
リアは恐る恐るたずねた。
「ああ、今度一緒に食べよう。その時に払ってもらうよ。」
「わかりました!」
にこやかな表情のルーファスにリアも笑顔で頷いたのだった。




