20 体育、その後
体育の授業の翌日。
朝、リアが教室に入るなりシンシアが駆け寄ってきた。
「リア!」
大声でリアの名前を呼ぶシンシアは、目が血走り、目の下にはクマが出来ていた。
髪の毛もいつになくボサボサしている。
「どうしたの?シンシア。」
体調でも悪いのかと思い、リアは心配そうに尋ねた。
「ついさっき完成したのよ!見て!」
クマが出来ていたが、その瞳はランランと輝いていた。
「?」
手渡された紙の束を見た。
一番上のページに”騎士姫と最愛の妹姫”と書かれていた。
「これ、シンシアが書いたの?」
「そうなの。昨日、リアとイーリスが剣で戦ったでしょう。イーリスがあなたをお姫様抱っこした瞬間、稲妻のように思いついたの。部屋に帰って、一気に書き上げたのよ!」
そうだ、シンシアは演劇鑑賞が趣味で、自分でも物語を作るのが好きなのだ。
「へえ、そうなんだ。」
じゃあ、待て。
この騎士姫はイーリスで、最愛の妹姫というのは私のことか?
パラパラと目を通してみた。
王家に仲の良い姉妹がいた。
剣をたしなむ勇ましい姉姫は年の離れた幼い妹を溺愛していた。
ある日、妹姫が魔王にさらわれ、姉姫が仲間と協力しながら妹を助けに行くという冒険ものだった。
家族愛あり、ハラハラあり、友情ありとなかなか良く出来ていた。
「うん、よく書けてる。面白いよ。」
リアが感想を述べると、シンシアはパアっと笑顔になった。
「ありがとう。じゃあ、リアは妹姫のエミーリア役でいいよね?」
「役?」
「今度、文化祭があるでしょう。毎年、各学年で演劇を上演することになってるのよ。1年はこれをやりたいなと思ってて、今日のホームルームでみんなに提案させてもらうわ。」
「えっ。ちょっと待って。文化祭は生徒会の仕事がけっこうあるから役員は免除されるって・・・」
「リアがそう言うと思って、エミーリアの出番とセリフを極力減らしたのよ。見て、これ台本!」
シンシアはそう言うと、カバンから別の紙の束を取り出した。
台本まで作ったのか・・・。
パラパラめくったが、リアのセリフは
『おねえさま、大好き』
『おねえさま、助けて』
『おねえさま、ありがとう』
ほとんど『おねえさま』という言葉で事足りていた。
中盤は魔王にさらわれているので、出番も最初と最後だけだ。
ここまでされたら友人として逃げられる気がしない。
リアはあきらめて頷いた。
その日のホームルームでシンシアの案が採用された。
そして、主役イーリス、妹姫リアという配役もすんなり決定してしまったのだった。




