17 保健室にて
「初めての女の子の日には、赤色のベリーパイを食べてお祝いするのよ。帰りに購買で買って帰ったら?」
女の子の日・・・
ジークフェルドの顔が真っ赤になった。
この教師、甲高い声でそんなプライベートなことをぺらぺらと。
廊下まで筒抜けじゃないか。
ジークフェルドは眉間にしわを寄せた。
しかし、先生の声は止まらない。
「ナプキンは持ってないわよね。保健室のを3個あげるわ。明日からの分は購買で買いなさい。あ、ベリーパイと一緒に買うと初めてってばれちゃうか。パイはまた今度の方がいいかもね。」
アハハハと笑うクロミー先生の声に、ジークフェルドはこめかみを押さえた。
誰だ。こんなデリカシーのない女を保健の教師に採用したのは。
「この後、どうする?えっ?生徒会?まだ、顔色が少し悪いし、今日はもう帰ったら?」
リアも何か答えているようだが、甲高い教師の声しか聞こえてこない。
「カバンかあ。私が取りに行ってあげるわ。えっ?遠慮しなくていいのよ。だって今年の生徒会って、イケメンばっかりで目の保養になるじゃない。役得役得。」
あの教師が来るのか。
急いで生徒会室に戻らねば。
話の内容にげんなりしながら、ジークフェルドはきびすを返しかけた。
その時、先生がリアにとんでもない質問をした。
「あなたは生徒会の中で誰押しなの?」
ジークフェルドは首をくるんと回し、再び聞き耳をたてた。
「へえ、そうなんだ。私の押しはあの銀髪の公爵家の子なのよ。あの人を見下したみたいな冷たい瞳がグッとくるの。」
リアの返答は全く聞こえなかった。
そして、あれほど人のプライバシーを拡散していたのに、クロミー先生の発言からは肝心の部分はわからなかった。
「じゃあ、ちょっと行ってくるわね。あ、汗をいっぱいかいてたから、脱水になったらいけないし、お水を渡しておくわね。」
クロミー先生が立ち上がる音が聞こえ、今度こそジークフェルドは生徒会室に戻ったのだった。
※
翌日の放課後、生徒会室に現れたリアはすっかり落ち着いていた。
「ジークフェルド様、昨日は保健室まで運んで下さってありがとうございました。」
「もう、いいのか?」
「はい、先生に痛み止めをもらってから、お腹の痛みはすっかり治まりました。」
二人の会話を聞いていたクリスが口をはさんできた。
「運んだって、なに?」
「こうやって運んで下さったんです。」
リアが両腕をお姫様抱っこの形にしながらクリスに説明した。
「へえ、そうだったんだ。優しいね。」
クリスは悪い笑顔でニヤついている。
リアは純粋に、ニコニコしながら、そうなんですと答えていたが、ジークフェルドは居心地が悪くなった。
「昨日のリアの分の書類、手伝ってやるから早く取り掛かるぞ。」
それから、ほどなく現れたヘンドリックにも手伝ってもらい、この日の生徒会は平和に過ぎていったのだった。




