16 保健室にて
「あら、ステキ。王子様にお姫様抱っこで連れて来てもらうなんて、最高ね。」
保健室のクロミー先生は30代半ばの妙に色気のある女性だった。
甲高い声でウキウキそう言われて、ジークフェルドはげんなりした。
体調が悪い時に、この声を聴いたら悪化しそうだな。
そう思いつつ、リアを保健室のベッドに寝かせた。
「生徒会室では顔色が悪くて、脂汗をかいていたんです。先ほどまでお腹が痛いと言ってました。」
先生はリアのおでこに手を当てた。
「熱はなさそうね。今は痛みも引いてそうだし、しばらく保健室で様子を見ましょうか。殿下は生徒会に戻っていただいて大丈夫ですよ。」
「いや。しかし・・・」
ジークフェルドが心配そうにリアに目をやると、先生がふふっと笑った。
「年頃の女の子は、男性に寝顔を見られたくないものですよ。彼女が起きたら生徒会室に連絡しますから。」
先生にそう言われると、これ以上食い下がるのもおかしい気がしてジークフェルドは保健室を退室したのだった。
生徒会室に戻ると、クリスとルーファスとヘンドリックの三人が既に集まり、それぞれの机で事務仕事をしていた。
「ジーク。リアのカバンがあるんだけど、戻ってこないんだ。どこに行ったか知ってる?」
クリスが尋ねてきたので、体調が悪そうだったから自分が保健室まで連れて行ったことを説明した。
もちろんお姫様抱っこについては伏せてだ。
「そうなんだ。心配だね。カバンは保健室へ持って行ってあげた方がいいのかな。」
クリスがそう言うと、ヘンドリックが立ち上がった。
「僕が持っていきます。」
ジークフェルドはそれを手で制した。
「リアは今、寝てるんだ。起きたら保健室の先生が生徒会に連絡をくれると言っていたから、それを待てばいいんじゃないか。起こしたら可哀そうだしな。」
何となくだが、ヘンドリックにリアの寝顔を見せるのが嫌だと思ったのだ。
「そうなんだ。じゃあ、先生からの連絡を待とうか。」
クリスの一言で、再びみんな仕事へと戻ったのだった。
カリカリカリ
今日は溜まった事務仕事をこなす日だったので、皆、机にむかい印鑑を押したり、サインをしたり、静かに時間が流れた。
そして、1時間くらい経った頃。
「あ、そういえば、文化祭の資料を職員室に取りに来るよう言われてたんだ。ちょっと職員室まで行ってくる。」
昨日、文化祭委員の先生に言われたことを思い出し、ジークフェルドが席を立った。
3階の職員室で資料を受け取り、4階の生徒会室に戻ろうとしかけ、ふとリアのことが気になって、そのまま階段を降り、2階の保健室へと向かった。
保健室に着き、扉をノックしようとした時、クロミー先生の声が中から聞こえてきた。
「はじめてなの?」
ジークフェルドはノックしようとした手を止め、聞き耳をたてた。
はじめて?
「15歳で初めては、ちょっと遅いわね。でも、良かったじゃない。おめでとう。」
おめでとう?
何の話だ?
ジークフェルドは眉をひそめた。




