第152話 夕食での会話
その言葉はジークフェルドによって瞬殺された。
「そんなこと許可できるわけないだろう。」
ああ、よかった・・・
しかし、リアがホッとした瞬間ジークフェルドがとんでもないことを言い出した。
「ペナルティを俺が代理でするならいいぞ。」
なんてことを言い出すのだ。
リアはギョっとしたが2人の間で話はまとまってしまったようだ。
食事の後はジークフェルドの部屋に移ったが、リアがうっかり敬語で話す度に忠実にペナルティが実行された。
初めは面白がっていたクリスも、しだいにうんざりした表情を浮かべるようになった。
「ねえ、リア。選択を間違ったと思うなら、今なら引き返せるよ。今から僕に乗り換えない?アルノーなら母上もいるよ。」
その言葉にジークフェルドがかみついた。
「バカ言え。引き返せるか。もう結婚式の日取りも決まっているのに。」
「はっ?」
クリスが目を見開いてジークフェルドを見た。
「何それ?初耳なんだけど。」
「決まったのが俺たちがリンドブルムを発つ直前だったからな。」
「だとしても、そんな大事なことなら昨日言うべきだよね。」
クリスが呆れた表情を浮かべた。
「ああ、それはそうかもな。すまなかったな。」
悪びれないジークフェルドにクリスはこめかみを押さえ、ため息をついた。
「リア。本当にこの男でいいの?」
リアは苦笑しつつも、しっかりと頷いた。
「ハアー。本人がいいならいいけどね。で、予定はいつなの?」
「3月末にリアが16歳になるから、その日に式を挙げる予定なんだ。」
大陸では、だいたいどの国でも結婚は16歳以上となっている所が多い。
リンドブルムもアルノーもそうだ。
「あと半年じゃないか。」
クリスが目を丸くした。
「王族の結婚なのに、準備期間がそんな短くて大丈夫なの?リアの王族教育も間に合わないだろう?」
実際、クリスの兄ヘンリーとエリザベスの結婚式は1年以上前から念いりに準備されている。
「リアの王族教育は終わらなかったら、続きは結婚後にしたらいいだろ。それにリアを放置すると変な男をすぐに引っかけてくるから、早く落ち着きたいんだよ。」
クリスはあきれ果てた表情でジークフェルドを見た。
昔からこのいとこは大雑把だったが、年を重ねても遺憾なくその才能が発揮されているようだった。
これに付き合うリアも大変だな・・・
クリスは内心ため息をついた。
「それに兄上のところが、もう5年経つしな。」
ポツリとつぶやいたジークフェルドの言葉に、クリスは瞬時に意味を理解した。
ジークフェルドと兄のリュークフェルドは8歳年が離れている。
同じ年の妃とは5年前に結婚したが子供がいないのだ。
このままでは王太子に側妃を迎えるという話が出てくるのは時間の問題だ。
夫婦仲はとてもいいと聞いているし、その選択は王太子夫婦にとって共につらいものになるだろう。
クリスはチラッとリアを見たが、彼女はキョトンとした表情を浮かべていた。
今の言葉の意味、リアは分かってないんだろうな・・・
まあ、ジークはやる気満々の様だし。
頑張れ、リア・・・
クリスは心の中でリアに激励を送った。
「なるほど。結婚式には招待してよ。」
「もちろんだ。」
結局、そのことはリアに説明されることなく別の話題へと移って行ったのだった。




