15 保健室にて
リアが生徒会に入ってから1か月が過ぎたある日。
「リア、顔色悪いよ。大丈夫?」
授業が終わると、シンシアが心配そうに尋ねてくれた。
「うん。大丈夫と思う。朝からちょっとだるいけど、熱もないし。」
「無理しないでね。生徒会はお休みにする?」
「ううん。大事な会計資料を預かってるから、ルーファス先輩に渡さないといけないし。」
「資料だけ渡したら、帰らせてもらったら?」
「ありがとう。しんどかったらそうするわ。」
シンシアと別れ生徒会室に入ると、まだ2年生は誰も来ていなかった。
リアは自分の席に座るとメガネをはずし、机の上に突っ伏した。
※
ジークフェルドは学院ではクリスと行動することが多く、生徒会にもいつも一緒に行っていた。
しかし、その日、化学の授業でクリスの班が実験に失敗しやり直しとなったため、先に行くよう言われてしまった。
正直、ジークフェルドはリアと二人っきりで話をしたことはなく、他の3人に比べリアとの距離が遠かった。
二人っきりだったら気まずいなあ・・・
そんなことを思いながら生徒会室に入ると、机に突っ伏してリアが寝ているのが目に入った。
寝てるんだったら、そのままクリスたちが来るまで起こさないでおくか。
そう思い、リアの顔を何気なく覗き込むと、顔色が悪く額にはあぶら汗が浮かんでいた。
「おい。リア、大丈夫か?」
思わず声をかけてしまった。
リアはピクッと動くとだるそうに顔を上げ、ジークフェルドを見上げてきた。
「ジークフェルドさま・・・?」
グリグリメガネは外され、体調が悪いからか、大きな金色の目は潤んでいる。
ぼんやりした表情のリアにじっと見つめられ、ジークフェルドは胸がどきどきしてきた。
以前、ルーファスが言っていた”メガネを外すとけっこう可愛い”という言葉が頭の中を駆け巡る。
「あー、いや。しんどそうだったから、大丈夫か?」
リアは眉間にしわを寄せ、小さな声で答えた。
「身体がだるくて、お腹が痛いんです。」
「保健室に行くか?ルーファスには俺から伝えておくぞ。」
リアは頷き、立ち上がろうとしたが、お腹を押さえて再び椅子に座り込んだ。
顔色がますます悪くなり、痛みも強くなっているようだった。
「歩くのは無理そうか?」
リアは小さく頷いた。
「ちょっと、ごめんな。」
そう言うと、ジークフェルドはリアを横向きに抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「ジークフェルド様⁉」
リアは目を丸くしてジークフェルドを見上げた。
うるんだ目で近距離から見つめられ、ジークフェルドは顔を赤くした。
「保健室まで運んでやる。・・・メガネはつけとけ。」
少しかがんで、机の上にあったメガネを取りリアの顔にかけた。
王子様に抱っこされるという異常事態だったが、身体がしんどくて、リアにはそんなことを考える余裕がなかった。
目をつむり、コテンと頭をジークフェルドの胸にあずけた。
リアをかかえ、ジークフェルドは生徒会室を出た。
まず、リアの軽さに驚き、その身体の柔らかさに驚いた。
シャンプーなのか、ふわっとシトラスの香りがした。
子供だと思ってたのに、やっぱり女の子なんだな。
ジークフェルドは火照る頬をごまかすように、しかめっ面で廊下を移動したのだった。




