第148話 しばしの別れ
「僕も2日後にアルノーに戻る予定なんだ。」
「えっ?」
アルフォンスが帰国して3日ほどたった朝食の席でクリスに言われ、リアは思わず声をあげた。
東の離宮から戻って以降、リアは王族教育が始まり忙しい日々を過ごしていた。
ジークフェルドやクリスと会えるのは朝食と夕食の時くらいで、夜も昼間の疲れで早く寝てしまうため、ここ最近2人とゆっくり過ごす時間はほとんどなかったのだ。
学院にいた時からクリスはリアを可愛がってくれていたし、恐らく陰で守ってくれていたこともあるのだろう。
アルフォンスとは違った意味で兄のような存在だった。
話す時間が短くても、その存在が身近にいてくれる事が心強かった。
クリスがいなくなることに心細さを感じ、不安そうな表情を浮かべたリアにクリスが微笑んだ。
「そんな悲しそうな顔をしないで。アルノーの王都からここは馬車で2.3日の距離だ。一生会えないわけじゃないよ。」
「はい・・・。」
「それにすぐに会えるよ。リアも母上や友達や生徒会のメンバーには挨拶はしたいだろう?」
その言葉にリアはハッとし、ジークフェルドを見た。
「俺もアルノーには1年留学する予定だったからな。それを半年で切り上げるにあたって挨拶は必要だろう?中期休暇の終わる少し前に一度アルノーを訪れるつもりだ。その時リアも一緒に行こう。」
リアは嬉しそうに頷いた。
仲良くなった友達やお世話になった生徒会の先輩たちにはもう一度会いたかったし、きちんと別れの挨拶をしたかったのだ。
※
その日の夜、リアが自室で休んでいるとノックの音が響いた。
「リア、僕だよ。」
カイルの声だ。
「父さま、どうしたの?」
リアは扉を開け、カイルを中に招き入れた。
「明日、アルノーに戻ろうと思ってるんだ。」
リアが入れたお茶に一口つけた後、カイルがいきなり切り出した。
目を見張ったリアを見ながらカイルが話を続けた。
「姉さんに会ってシリルを男爵家の跡継ぎにしてもらえないか相談に行こうと思ってね。」
シリルとはリアのいとこで、カイルの姉マリサの次男である。
「シリル兄さんを。」
「うん。僕がリンドブルムに来るには、領地が落ち着いてからじゃないと無理だからね。動くなら早い方がいいだろう。」
それが必要な事だと分かっているし、また会えることも分かっているが、クリスに続いて父までアルノーに戻ってしまうと聞いてリアの表情は冴えなかった。
「そんな寂しそうな顔をしないで。またすぐ会えるよ。それにここにはジークフェルド王子やロイもいるだろう?」
「うん。」
そう返事をしてカイルに抱きついた。
「僕の可愛いお姫様は、こんなに大きくなっても甘えただね。」
今は亡き最愛の妻によく似た娘を、カイルは笑って抱きしめたのだった。




