第147話 話し合い
やがて心が決まったのか目を開けエリオットを見た。
「分かりました。それで、お願いします。」
それを聞きホッと息をついたリアを見て、アルフォンスは複雑そうな表情を浮かべた。
「リア。私が君に求婚したのは継承争いのこともあるが、一番の理由は学院で君と過ごした時間が楽しかったからだ。本気で君が欲しいと思っていたんだ。」
真っ直ぐな視線を受け、リアは頷いた。
「私もとても楽しかったです。学院で先生と一緒に過ごした日々は穏やかでホッとできる時間でした。」
心からの言葉をアルフォンスに伝えた。
アルフォンスはその言葉に淡く微笑んだ。
そして視線をジークフェルドに向けた。
「ジークフェルド殿下。リアを幸せにしてやってください。」
「はい、必ず。お約束いたします。」
力強くうなづくジークフェルドにアルフォンスは笑顔になった。
「リアを泣かすようなことがあれば、遠慮なく私が彼女を貰いますよ。」
「絶対泣かせません。」
ジークフェルドは挑むような眼でアルフォンスに告げたのだった。
話が一段落し、エリオットとアルフォンスが条約の締結に向けて話を詰めることになった。
部屋を出るよう促されたリアが焦ったようにアルフォンスを見た。
「あの、先生。これ・・・。」
自分の耳を指さした。
「ああ。もともとリアをグラシアスに連れて帰るつもりだったからね。外す工具は本国にしかないんだよ。工具は今度書簡と一緒に送るから、それまで付けておいてくれるかな。それを見て時々僕を思い出してくれたら嬉しいよ。」
アルフォンスは驚くリアに優しく笑いかけた後、ジークフェルドに意地の悪い視線を送った。
このヤロウ・・・
キレそうになるのを抑え、ジークフェルドは引きつった笑みを返したのだった。
※
その後聞いたところによると、グラシアスとの条約とは農作物の輸出入の話だったそうだ。
昨今の異常気象の進行で、どんどん寒冷化が進み北方の国であるグラシアスの農作物の出来高はものすごい勢いで減少していた。
グラシアスは人口の多い大国なので、食料不足は国の存続の危機である。
アルノーのモーリス教授に寒さに強い作物の品種改良を要請したが、成果が出てくるのに数年はかかる。
それまで、リンドブルムの農作物の輸出のうち一定量をグラシアスにまわして欲しいという希望をアルフォンスが事前に伝えていたそうだ。
他の国との関係もあるため急にグラシアスにだけ輸出を増やすことは難しいが、そこはエリオットがどうにかしてくれるようだ。
アルフォンスは差し迫った国の危機に対応するため、リアを欲しいという自分の望みを諦めたのだ。
”彼は立派な皇帝になるだろう”
エリオットがそう言っていた。
交渉はスムーズにまとまり、話し合いから2日後にはアルフォンスはグラシアスに帰ることになった。
ジークフェルドと共に見送りに出たリアをアルフォンスは軽く抱きしめ、おでこに触れるようなキスをした。
「リア。幸せに。」
慕っていた先生との別れに、リアの目に涙が浮かんでいる。
アルフォンスはそんなリアを見て優しい笑みを浮かべた後、ジークフェルドに軽く会釈をしてその場を離れた。
そしてその後、エリオットたちと別れの挨拶をし帰国の途についたのだった。




