第144話 満月の夜
ジークフェルドがリアに詰め寄った。
「そう呼べって言われて、言わないとお仕置きがあって・・・。」
リアは慌てて弁解したが、ジークフェルドはムスッとしている。
「じゃあ、俺のこともジークって呼んで欲しい。」
「えっ、いや、でも。」
拒否しようとするリアの肩をジークフェルドが掴んだ。
「リアと俺は身分もほぼ対等だし、恋人どうしだろう?」
恋人どうし・・・
面と向かって言われると恥ずかしい気がする。
リアは顔を赤くしてうつむきながら頷いた。
「リア」
名前を呼んで促された。
「・・・ジーク」
真っ赤な顔で少し上目遣いに自分の名前を呼ぶリアが愛おしかった。
そして再びジークフェルドはリアを抱きしめた。
ジークフェルドは少し身体を離し、愛おし気にリアの頬に手をやった。
その時ふと、視線がリアの耳に向いた。
「そのピアスはアルフォンス殿下にもらったのか?」
ちょっと嫌そうな表情で聞かれた。
「はい。離宮にいる間はずっとつけておいてと言われてるんです。外すのに特殊な工具がいるらしくて自分じゃ外せなくて。」
リアの言葉に、ジークフェルドはピアスの留め具を回したり引っ張たりしたが、やはり外すことは出来なかった。
耳元を触られて、リアは身体を固くした。
「ほんとだ。外せない。リア、東の離宮を出たら青い石のピアスをやるからな。」
ジークフェルドは憮然とした表情で言った。
先生に対抗してるのかな?
負けず嫌いなところも可愛く感じ、リアは笑顔になり頷いた。
「ありがとうございます。」
「もうそろそろ戻った方がいいな。身体を冷やさないようすぐ部屋に戻れよ。」
ジークフェルドはそう言うと最後にもう一度リアを抱きしめ、そっと唇を重ねてきた。
「リア。愛してる。」
小さな声でささやいた。
その後、名残惜しそうに身体を離し、きびすを返しすとテラスの手すりに足をかけ木に向かってジャンプした。
両手で枝につかまり、そこからするすると地面へと降りて行った。
そして振り返り、リアの方に片手をあげた後、あっという間に森の中へと消えていてしまった。
一方リアは自分の唇を両手で押さえたまま茫然とジークフェルドが消えていった森の方を見つめていた。
しばらくそうしていたが、ハッと気が付くと後から頬が熱くなってきた。
ドキドキする胸を押さえ、リアも部屋へと戻ったのだった。




