第142話 クリスの部屋で
リアが東の離宮に行って2日目の夜。
ジークフェルドはクリスの部屋にいた。
「そんな不機嫌そうな顔してるんだったら、自分の部屋に戻ったら?」
クリスが呆れたように言った。
「俺、不機嫌そうか?」
クリスに指摘され、初めて気付いたようだ。
「うん。ずっと眉間にしわが寄ってるよ。僕らはここで待つしかないでしょ。」
「・・・。」
沈黙するジークフェルドにクリスが続けた。
「まあ気持ちは分かるけどさ。アルフォンス殿下は抜け目のなさそうな人だったしね。」
ジークフェルドは黙ったままだ。
クリスはため息をついた。
「兄上が少し前に、グラシアスの第一皇子とお会いする機会があったんだ。いい人だけど現皇帝みたいな切れ者っぽい感じではなかったとおっしゃってたよ。たぶんリアを手に入れなくても、アルフォンス殿下が次の皇帝になるんじゃない?」
「だったら尚更あいつがここまでリアに執着する意味が分からないじゃないか。」
クリスはだから大丈夫だと言いたかったのだが、その言葉はジークフェルドには逆効果だったようだ。
「まあ、それは・・・学院でリアと一緒に過ごして純粋にいい子だと思ったんだろうね。現在、リンドブルム王家唯一の姫君だし、それが自分のお気に入りの子だったらちょっと頑張ってみようかなって感じなんじゃないの?」
クリスが疲れたような表情で答えた。
恐らくクリスの言う通りなのだろう。
「あいつ、落ち着いてて大人だし、リアも懐いてたし・・・。」
要するにリアがアルフォンスのことを好きにならないか不安なのだ。
「うーん。それは否定できないな。女性にとったら包容力のあるタイプだろうね。」
その言葉に顔をしかめたジークフェルドを見て、クリスは盛大なため息をついた。
「大丈夫と思うけど・・・。そんなに心配ならリアを見てきたら?」
「今からか?」
窓の外を見ると日は沈み、すでに暗くなっている。
「まあ、窓の外からでも見えたらだけど。」
部屋に閉じこもっていても空気が暗くなるだけだ。
ジークフェルドはもともと身体を動かして発散するタイプだし、ちょっと外に出て頭を冷やしてきたらいい。
クリスはそんなつもりだった。
「そうか・・・そうだな。クリスありがとう。リアに会いに行ってみる。」
ジークフェルドは立ち上がるとスタスタと扉の方へ向かった。
「えっ、本当に行くの?」
クリスが驚いた。
頷くジークフェルドにクリスは呆れた表情を浮かべた。
「アルフォンス殿下に見つからないでよ。」
「そんなヘマしないさ。」
二ッと笑って、ジークフェルドは部屋を出て行った。
そして廊下からは走って立ち去る足音が響いてきたのだった。




