第134話 東の離宮
リアの視線に気付いたアルフォンスが尋ねてきた。
「その馬がいいの?」
「はい。とても綺麗な子ですね。」
リアは満面の笑みで頷いた。
「この広場は馬場も兼ねているので、この中なら馬を走らせても大丈夫ですよ。」
馬小屋の男性に言われ、リアは先ほどの白馬に、アルフォンスは大きめの黒毛の馬にまたがった。
障害物を飛び越えたり、アルフォンスの馬と競争したり、白馬はリアの指示に素直に従ってくれた。
「すごいわ。スノウ、あなた賢いのね。」
リアは馬の名前を呼び、首筋をなでてやった。
汗ばみ身体が熱くなってきた時、アルフォンスが馬を寄せてきた。
「そろそろ昼過ぎだし、一回離宮にもどろうか。」
「そうですね。」
そして、そのまま小屋の方へと引き返した。
「楽しかったですね。先生。」
小屋から離宮へ戻る道すがら、上機嫌でリアがアルフォンスに話しかけた。
アルフォンスは一瞬微妙な表情になり、苦笑した。
「リア。僕たちは先生と生徒としてここにいるわけじゃない。アルって呼んでくれるかな。」
リアはギョっとした。
年齢もリアよりかなり年上だし、学院の先生で、おまけにグラシアスの皇子様だ。
リアはブンブンと首を振った。
「無理です。」
速攻で拒否したリアに、アルフォンスは少し悪い笑みを浮かべた。
「それなら先生からの命令だ。アルと呼びなさい。」
涙目になって自分を見上げるリアに、アルフォンスは優しく笑った。
「じゃあ、まずアルって続けて5回言ってみて。」
それなら言えそうだ。
「アル、アル、アル、アル、アル」
「じゃあ3回」
「アル、アル、アル」
「2回」
「アル、アル」
「1回」
「アル」
アルフォンスは満足そうに笑った。
「言えたね。そうだ、先生って言ったらペナルティをつけようか。1回言うごとにリアを抱きしめることにしよう。」
「えっ⁉」
びっくりしてアルフォンスを見た。
「簡単だよ。先生って言わなければいいだけだよ。」
「うっかり言っちゃいそうです・・・。」
顔を赤くしたリアにアルフォンスは飄々と答えた。
「その時は僕がリアを抱きしめるだけだよ。」
そんな会話をしているうちに、離宮へと帰り着いた。




