第132話 東の離宮
「やあ、リア。よく来たね。」
リアが東の離宮を訪れると、アルフォンスがにこやかに出迎えてくれた。
「3日間お世話になります。よろしくお願いします。」
リアは両手をきっちりお腹の前でそろえ、ペコリと頭を下げた。
「リア。ここは学院じゃないし、今は先生と生徒じゃない。そんな3日間実習に来るみたいな挨拶は止めて欲しいな。」
アルフォンスはクスクスと笑うと、リアの肩を抱き離宮の中をエスコートした。
西の離宮のホールは暖色系のステンドグラスが使われ明るく可愛いイメージだったが、東の離宮はグリーンを基調としたステンドグラスで、まるで森の中にいるような落ち着いた雰囲気が漂っていた。
「わあ、こちらの離宮はグリーンなんですね。こういうのも優しい感じでいいですね。」
リアの言葉にアルフォンスが首をかしげた。
「僕は行ったことがないけど、西は色が違うのかい?」
「オレンジとかピンクとか明るい色なんです。」
「ああ、リアはそっちの方が合いそうだね。君の部屋を用意したから、まずは荷物を降ろそうか。」
2人で並んで歩くと、学院で一緒にすごした時のようで全く違和感がなかった。
先生がグラシアスの皇子だったなんて・・・。
リアはチラッと横を歩くアルフォンスに視線を向けた。
「どうかした?」
視線に気づき柔らかい笑顔で尋ねてくるアルフォンスは、リアの知っている先生と同じだった。
「いえ。先生がグラシアスの皇子様だなんて今でも信じられなくて・・・。それに、私、学院で色々失礼なこともしてしまったかもって思って。」
「ふふ。失礼な事なんて全くなかったよ。それにそれを言うなら、リアもリンドブルムのお姫様だろう?」
「それも、まだ実感がないんです。」
「それは時間と共に慣れてくるよ。さあ、部屋に着いたよ。」
案内された部屋は3階の部屋だった。
「廊下をはさんで斜め前が僕の部屋だ。会いたくなったら、いつでも訪ねて来てくれていい。この後、離宮の庭を散策しようと思ってるんだ。30分後に呼びにくるから動きやすい格好に着替えておいてほしい。」
そう言ってアルフォンスは部屋の扉を閉めた。
東の離宮は部屋の壁紙も少しグリーンが入ったようなクリーム色で落ち着いた雰囲気だった。
リアは荷物をクローゼットにしまうと、動きやすいワンピースに着替えた。
きっちり30分後。
「リア。支度は出来たかい?」
アルフォンスが外から声をかけてきた。
「はい」
リアは返事をしながら扉を開けた。
シンプルなワンピースに、両サイドをおさげにしたリアを見てアルフォンスは笑みを深めた。
「やっぱりこっちの方がリアっぽいね。」
「どういう意味ですか?」
離宮の散策にふさわしくない格好だったのだろうか?
リアは不安になって尋ねた。
「昨日のようなドレス姿もとても綺麗で可愛かったけど、僕が知っているリアはこっちのリアだと思ったんだよ。」
初めてアルフォンスに出会った時は、パサパサのおさげに、あのメガネをかけていて、制服もブカブカだった。
思い出しても恥ずかしくなり、リアは顔を赤くしてうつむいた。
「どっちのリアも可愛いと思うよ。じゃあ、まずは森の方へ行こうか。」




