第111話 お見舞い
「ルーファス。」
名前を呼ばれルーファスがヘンドリックを見た。
「僕はね、リアちゃんにとても感謝しているんだ。いくらクリス王子が僕とおじさんの会話を聞いていたとしても、リアちゃんがいなかったら僕が生徒会に入ることは無かっただろうし、こうして君とこんな風に過ごすこともなかっただろう。」
ルーファスは黙って話を聞いている。
「彼女のおかげで僕は自分を閉じ込めていた殻を破ることができ、我慢するばかりのつまらない人生から抜け出すチャンスをもらえたんだ。おまけに、これまでの僕なら決して一生涯交わることが無かっただろう君のような友人も出来た。」
「私もそうだな。男爵家出身のリアが入学前から領地経営の知識を身につけていたことや、ヘンドリックのように身分に遠慮して実力を隠している者がいるなんて考えたこともなかった。これまで自分の生きてきた世界や視野が、実は狭かったんだと認識できたのはリアのおかげだ。もちろん、おまえのような友人が得られたのもな。」
生徒会の中でリアが緩衝剤となり、男子4人のバランスが取れていたのもある。
「リアちゃんがいてくれたから、王子たちとも気負うことなく普通に会話出来てたしね。」
ルーファスもそれは感じていた。
生徒会では王家との主従関係を守り、卒業後もそれを維持する。
ルーファスはそのつもりだったから、当初は王子たちと一定の距離を保つよう気を付けていた。
リアが入ってきたことでクリス達とも本音を出して話す機会が生じ、その結果より強い結びつきを彼らと築くことが出来たように思う。
そしてヘンドリックとルーファスは、再び各々の思考にひたり口をつぐんだ。
ルーファスは父親のことを考えていた。
あれほど見下していたリアが実は王家の血をくむ高貴な少女だったと知った後、父は自分の信じていた主義に疑問を持つようになったのだ。
信じていたものが揺らいだせいか心が弱り、病に倒れた父をルーファスが支えた。
仕事を共有し話す機会が増え、以前より父のことが身近に感じられるようになった。
父がリアにしたことは許せないが、父子関係を無くせるわけではない。
親子である以上、良い関係でいるに越したことはないのだ。
父と前より歩み寄れたのもリアのおかげかもしれないな。
ルーファスがそんなことを考えていた時、ヘンドリックがポツリとつぶやいた。
「リアちゃんは、ここに戻ってくるかな?」




