第107話 クリスとの再会
「君らしい答えだよ。そうだなあ、どういうきっかけで仲良くなったの?」
クリスが聞き方を変えてきた。
「きっかけというか、旅の途中で一緒に木登りをしたり、町で学院の友達への土産を買うのに付き合ったりしてるうちに何となく・・・。」
「木登り?」
クリスが右手でこめかみを押さえた。
「そうか。リアは田舎育ちだし、そういうのの方が良かったんだ。」
ルーファスは若い女の子が喜びそうなキラキラしたことを色々頑張ってリアにアプローチしていた。
あんなに頑張っていたのに的外れだったのか・・・。
少しルーファスが気の毒になった。
「ドキドキしながら手を繋いでみたら嫌がられなかったから、次は肩を抱いたりして少しずつ距離を縮めていった感じだ。」
なるほどとクリスが頷いた。
「それで、リアにはちゃんと気持ちを伝えたわけ?」
クリスの問いにジークフェルドは首を横に振った。
「手を繋いでも嫌がらないし、肩を抱いたらリアから頭を寄せて甘えてくれたりするんだが、嬉しそうな顔をした後に、なんか寂しそうな表情になったりするんだ。俺に好意は持ってくれてると思うんだが、時々自分でも自信が無くなる時があって。」
ジークフェルドの声が弱くなった。
それを聞いてクリスは呆れた表情になった。
「あのさあ、リアは自分のことを男爵令嬢と思っているわけでしょう。しかも、トルドー公爵に身分をわきまえろとか散々どやされたばかりだ。」
それを聞いてジークフェルドはハッとした。
アルノーの公爵家のルーファスとの身分差でもあれ程ひどい目にあったのに、ましてや自分はリンドブルムの王子だ。
「リアは俺と別れるつもりなのか?」
「ちゃんと付き合ってないなら別れるっていうのは違う気もするけど、君との恋に未来はないと思ってるんだろうね。」
それを聞き、ジークフェルドはがバッと立ち上がり離宮の方へと身体を向けた。
「どうしたの?」
クリスが問いにジークフェルドは焦燥した様子で答えた。
「リアにちゃんと気持ちを伝える。不安にさせたくない。」
今にも走り出しそうなジークフェルドの腕をクリスががっちり捕まえた。
「待ちなよ。リアは今ショネル夫人に捕まってるんだろ。もう少し考えをまとめてから動かないと。」
クリスに諭されジークフェルドは渋い表情を浮かべつつも再びベンチに座った。
「まず、伯父上はどういう意向なんだい?リアを王族に迎え入れると決められたのか、リアの気持ちを尊重しようとされているのか。」
ジークフェルドは首を振った。
「父上とは話が詰めれていないんだ。東の離宮にグラシアスからの急な来客があってバタバタしていてな。それならいっそのことクリスが来てから一緒に面会する方がリアにもいいかと思ったんだ。明日、お茶会という形で初顔合わせの予定だ。」
クリスは少し驚いたようだった。
「伯父上はまだリアに会ってないのか・・・。君はどうしたいんだい?」
ジークフェルドは真剣な表情でクリスを見つめた。
「リアには俺を選んでリンドブルムに来てもらいたい。」
きっぱりと断言したジークフェルドにクリスは目を見開いた。
この1週間の間に、クリスの想像以上に2人の関係が変化していたのだと改めて感じたからだ。
「それなら今日のうちに君の想いだけでも伝えておいたらどうかな?王族に復権するかどうかはリアにとって大きな人生の選択だ。他の人間が決めていいことじゃないけど、君の気持ちを聞いておくことはリアの判断材料の一つになるだろう。」
クリスの言う通りだ。
「そうだな。夕食後、リアに話してみる。」
ジークフェルドはそう言うとクリスに頭を下げた。
「ありがとう。おまえのお陰で頭が整理できたよ。」
クリスはクスっと笑い頷いた。
「うまくいくといいね。」




