第106話 クリスとの再会
女官は池のほとりにいたジークフェルドとリアを見つけると頭を下げた。
「ジークフェルド殿下たちも、こちらにおいでだったんですね。では、ごゆっくり。」
持っていた小さいバスケットをクリスに手渡すと、女官は離宮の方へと戻って行った。
「いや、あの。覗き見するつもりじゃなかったんだけど・・・。」
珍しくクリスが焦った表情を浮かべている。
「いつからそこにいたんだ?」
ジークフェルドはやや不機嫌そうだ。
「えーと、2人が魚にパンくずをやり終わった頃からかな。」
恥ずかしいところ、ほとんど見られてるじゃない・・・。
それを聞いてリアは真っ赤になりうつむき、ジークフェルドは無言で虚空を見つめた。
「ちょっと会わない間にずいぶんと仲良くなったんだねえ。詳しく聞かせてもらおうかな。」
クリスはいつもの銚子を取り戻してきてニコリと笑った。
その時、離宮の方から再び先ほどの女官がやって来た。
「リア様。衣装合わせのデザイナーの方が離宮に到着されました。」
急いできたのか息をきらせている。
「リア。急いで行った方がいい。ちょっと気難しい人なんだ。」
ジークフェルドに促されリアはチラッとクリスの方をみたが、クリスが頷くのを見て”わかりました”と言って女官の後について離宮へと戻って行った。
残されたクリスとジークフェルドは先程のベンチに腰かけ話始めた。
「気難しいデザイナーって、もしかしてショネル夫人?」
クリスに尋ねられジークフェルドが頷いた。
「王室御用達のデザイナーだろ?」
クリスが驚いている。
「父上が頼んだんだよ。」
ジークフェルドがため息をついた。
ショネル夫人はキキ・ショネルという自分のブランドも持つ超一流のデザイナーで大陸中にその名をとどろかせている。
妥協を一切許さないことで有名だ。
自分の仕事にプライドを持っているため王子であろうと国王であろうと、自分が納得するまで何度でも着替えさせたり、補正をかけたりするのだ。
ジークフェルドも以前、式典で着る礼服を作る時にえらい目にあったことがある。
リア、頑張れ・・・。
ジークフェルドは心の中でつぶやいた。
「そうなんだ、リアも大変だね。・・・それはそうとさ、さっきのはどういうことなのかな?」
クリスが尋ねてきた。
「どうとは?」
「なんで、たった1週間でリアとあんな事になってるわけ?アルノーではジークはリアと一番疎遠だっただろう?」
クリスに指摘されジークフェルドはふと考えた。
確かに旅に出る前は、そうだったかもしれない。
この1週間、日を追うごとにリアとの距離が縮まっていって毎日が充実していたから、アルノーでの生活がはるか昔の事のように思えた。
「なんでと聞かれても、ずっと2人でいたからかな?」
ジークフェルドの答えにクリスは、はあっと息をついて苦笑した。




