第105話 中期休暇のクリス
クリスは中期休暇に入ってすぐにアルノー北部の地方都市を訪れていた。
以前から決まっていた公務の一環だった。
リンドブルム国王である伯父の希望でリアをリンドブルムに連れて行くことになったが、あいにくヘンドリックは膝の治療で同行することが出来なかった。
ルーファスはトルドー公爵家自体がリンドブルムから制裁を受けている最中でもあり、今回の訪問は見送ることになった。
2人が一緒に行けないと聞いた後に、クリスが公務で遅れて行くと伝えた時のリアのがっかりした表情が忘れられない。
リアにとってジークフェルドは生徒会で一番遠い人物なのだろう。
身分が近いヘンドリックや役職が同じルーファスやと違い、大国の王子であり役がかぶっているわけでもない、会話力が高いわけでも女の子のあしらいが上手いわけでもない。
なるべく早く合流してあげた方がいいな、そう思い公務先から王都には戻らず直接リンドブルムに向かうことに決めたのだ。
本来なら公務先からクリスのフェアウェルパーティーをしてもらい、それから出発する予定だった。
しかし、領主が急病で倒れたためパーティーが中止となり、予定より早く出発することとなったのだ。
あの2人、どうしてるんだろう?
会話が続かずシーンとした状況でリアが一人で焦っている様子が容易に想像でき、クリスは馬車の中でくすくすと笑ったのだった。
リンドブルムの王宮に着くと、ジークフェルドたちが滞在しているという西の離宮に案内された。
離宮に着くと女官からジークフェルドとリアが庭園の池の方でピクニックがてらランチをしていると聞き驚いた。
2人でピクニック?
2人でそんなことをしているとは予想外だなと思いつつ、とりあえず池の方に様子を見に行くことにした。
そしてお腹は空いてないので昼食はいらないと言い残し、1人で池へと向かった。
池に着くと、ジークフェルドとリアがベンチに腰掛け池の魚にパンくずをやっているのが見えた。
2人の間にはバスケットのようなものが置かれ、中に昼食のサンドイッチが入っているようだった。
やがてそれに飽きたのか2人がボーっと池を眺め出した。
そろそろ自分も合流しようと思い声を出しかけた瞬間、ジークフェルドがバスケットを左横に動かしリアの方へと移動したのだ。
おやっ?と思い眺めていたら、ジークフェルドがリアの口元についたパンくずを取ってあげると自分の口へと入れるのが見えた。
そのまま見つめ合う2人に声をかけることも出来ず観察を続けた。
するとジークフェルドはリアの肩に手を伸ばし、顔を寄せていったのだ。
えっ?キスしようとしてるのか?
あの2人どうなってるんだ?
驚きのあまり立ち尽くしていると、後ろから先ほどの女官に名前を呼ばれた。
「クリス殿下~。どちらですか~?」
名前を呼ばれ慌てふためいたため、隠れていた低木に身体が当たり自分の存在が2人に見つかってしまった。
ジークフェルドに”おまえ、いつからそこに?”と言われるのと、女官に”お腹が空いてないとのことでしたので、軽いスナックをご用意いたしました。”と声をかけられたのはほぼ同時だった。




