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カラーパレット

作者: 菜塚 翠

人の心はカラーパレットだ。心の色を思考や言葉にのせて、世界というカンバスに描き出すのだ。


そんなことを考え始めたのはいつの事だっただろうか。

高校生、いや、中学生の頃だろうか。

対して興味のそそられない退屈な授業で、中国の思想家の性善説の話を聞いた。

普段は滞りなく耳をぬけていく教師の言葉がいたく脳裏に張り付いた覚えがある。

悪人も生まれた時は無垢であり、善きことに触れて育てば善となる。

これが、私が思う心のカラーパレットの本質なのだろう。


人は必ず生まれた時にまっさらなパレットを渡される。

親からの愛や、見る世界を通じてそのパレットに思い思いの色を乗せていく。

そして、自分好みに調色したパレットで世界を色付ける。

世界はひとつの大きなカンバスのようなものかもしれない。

人が紡ぐ歴史が、思想が、建築が、それぞれに色を持って紡がれる。


それを見る度に、私は私に問いかけてしまう。

どうして私のパレットは、こうも汚くなってしまったのか、どこでのせる色を間違えたのかと。

幼い頃は色鮮やかなパレットだった。

喜びの黄色、怒りの赤、哀しみの青。

自分好みのたくさんの色を素直に描いていたと思う。


そのパレットを、他人が汚した。

自分のパレットを、自分では無い他人が汚した。


いじめを受けた。声が小さいだの根暗だのと罵倒された。パレットの赤と青が混ざって紫になってしまった。

裏切られた。先生は味方だと言っていたのに、保身に走っていじめは無かったことにされた。

パレットに絶望の黒色がのった。


自分を責めた。

嫌という程自分を責めた。

たくさん、たくさん集めた色で、全てを消してしまいたい一心でひたすら塗りつぶした。

乾くことのない黒の感情は、他の色を全て呑み込み、喰らい尽くしていく。

気がつけば私のパレットは、所々に汚いマーブル模様の残る真っ黒な板になっていた。




いつしか時が流れて、私は大人になった。

黒いパレットの上に新しく色を乗せて生きてきた。

時が経って黒のパレットは固まって、新しくのせた色と混ざらなくなった。

昔ほど綺麗な色は出せないが、それでも自分を彩る色は着実に増えている。


新しい色で見る、新しい世界に、今日も私は自分の色を残していく。

辛い時こそ、自分に優しくいてあげてください。

自分を1番大切にできるのは自分です。

世界は本当に色鮮やかです。

どうかそれを忘れないでください。

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