……本当なの?
悪役は「役」です。
舞とリナの鉄壁の防御に因って俺の横に座る事を諦めた女王フローディア改めてフー祖母ちゃん(プライベート用)は、俺の真正面に座る。
「この国で、最初の男の国主にならない?」
開口1番に爆弾を吐いた!?
「フローディア様!」
「だって。リリーディアはアレだし、国の政治的な組織は監視さえきちんとしていれば大丈夫だしね。何より、私達は権限は有るけど権力は無いのよ?」
「た、確かにそうですが……」
「だったら……」
「断る」
「ルカちゃん……ダメ?」
「ダメ」
「どうしても?」
「ダメなものはダメ」
「……分かったわ。じゃあ、今日にでもリリーディアに女王の椅子を譲って、ルカちゃんの暮らす家に引っ越すわ!」
「……フローディア様!」
またクロシアによるフー祖母ちゃんへの説教が始まりましたので、暫くお待ちください。
「……分かったわ。ルカちゃんに嫌われたくないから我慢するわ」
この後は、お互いの過去話に花が咲いたが、予想内の乱入者が現れた。
「お母様!」
「リリーディア、お行儀が悪いわよ」
「失礼しました、お母様。
それよりも、失踪したルーネディアの息子が来たって……」
「初めまして。ルカ=エクスフィリアです」
「……その名は!?」
実は、このエクスフィリアという家名は、所謂「忌み名」的な意味を持つ。
だから、この国では、「エクスフィリア」という家名は存在しない。
「ルーネ=エクスフィリアから継承した」
「……そう。それでルーネディアは?」
「……」
「……! ルーネディアは何処!?」
「10歳の時、俺を庇って死んだよ」
「……嘘を言わないで! あのルーネディアが死ぬ筈ないじゃない!」
「事実だ」
「……わ、私は信じない。私を貶めようとする嘘に決まっているわ!」
「リリーディア!」
「……お母様?」
「母親を喪った子の前で、これ以上の醜態を晒すんじゃないよ!」
「……あ!」
「……」
「ルーネディアの最期は?」
「……美しく清廉だった」
「……もう、する必要は無いのね?」
どういう意味だ?
「……ありがとう」
俺にそう言ったリリーディアは、とても綺麗な笑顔だった。
そして、その顔は母さんにそっくりだった。
「お帰り、リリー」
「……ただいま、お母さん」
「どういう事だ?」
「それは……」
リリーディアからの「懺悔」の内容は、こうだった。
最初の頃は、次期女王はリリーディアだったが、次第に実力を現し始めた、後に俺の母さんになるルーネディアは、次々と支持を集めていた。
それまでは姉妹仲も良かったが、それは時間が経つにつれて冷たくなっていた。
更に、リリーディアは妹ルーネディアに対して高圧的になり、見下す様になっていった。
険しい顔で口汚い言葉で罵り、女王には向かない欠陥品と侮辱していた。
そして、ルーネディアの失踪だ。
これにより、名実ともにルーネディアの信頼は失墜した。
このルーネディアの失踪に因ってリリーディアの次期女王は確定する事になり、それ以降はルーネディアへの侮蔑の言葉は殆ど言わなくなるが、仕事に対して冷徹に効率化、そして合理化を部下達に強いた。
と、同時に妹ルーネディアに関する全てを無言の圧力で封じた。
……彼女は、偽りの仮面をしていたが、本心は違った。
今でもリリーディアさんは、妹ルーネディアを大切に思っていて、このまま国に居たら姉妹で争う事になると思ったリリーディアさんは、ルーネディアを国から逃げ出させる事にした。
そして、それが成功すると、国の法律を少しずつ変えていき、もし、ルーネディアが帰って来た時に大丈夫な様にしていた。
……そういえば、母さんの手紙に「姉を嫌わないで」って書いていたな。
「リリーディアさん」
「何?」
「母さんは、貴女の事を嫌っていません」
「……本当なの?」
「はい」
「ルーネディア……」
「全く。ルーネが居なくなってから、プライベートでリリーから会いに来たのは、これが初めてだよ」
「……ルーネディアが会えないのに、私だけ会う訳にはいかないじゃない」
これなら大丈夫だな。
「はい、リリーディアさん」
「これは?」
「母さんからリリーディアさんへの手紙だ」
「ルーネディアの……」
母さんからの手紙を受け取り、読み始めると次第に目に涙を貯め始め、そして決壊した。
「……グス。ルーネ……」
……結局、リリーディアさんの乱入が無ければ、する筈だった話は明日に持ち越しになった。
翌日
朝、メイドの案内で朝食を頂く為に食堂に到着したのだが、初めて見る顔が2つあった。
「食事の前に紹介するよ」
「初めまして。リリーディアの長女サリーディアですわ」
「初めまして。リリーディアの次女ミリーディアです」
「初めまして。ルーネディアの息子ルカだ。
冒険者をやっている」
続けて舞達を紹介したが、昨日の舞達が静かだったのは空気を読んで察していたからだ。
「お母様がまた優しくなったのは貴方のお陰みたいね。ありがとう」
「本当なの、サリーお姉様」
「ええ、本当よ。あの優しいお母様が本当のお母様よ」
「な、何を言っているの、サリー」
「だってそうでしょう?」
「あんな優しいお母様は初めてです」
「……」
どうやら、素のリリーディアさんは、愛されるイジられキャラみたいだな。
「邪神の封印についてだ」
???side
「この玉を壊すだけで良いのね?」
「はい、そうです。そうすれば、姉君の未来は安泰です」
「分かったわ」
パリーン!
「壊したわよ」
「おめでとう。これで姉君の未来は守られました」
「やったわ!」
……くははは。
確かに安泰だ。
何故なら「死」は全ての命ある存在の「絶対」なのだからな!
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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