……ソウダヨネー
恵梨香達には、それぞれに親王派の後見人的な貴族が居ます。
あの後も、ロゼの快進撃は続き、目標のフレイムキャタピラーも20匹を狩った。
「……ごめんなさいなのじゃ」
「構わないよ。それよりも楽しかったか?」
「楽しかったのじゃ!」
「それなら良いよ。でも、次からは気を付けろよ」
「分かったのじゃ!」
こうして、午後から始めたにも関わらず、午後3時過ぎには都市に戻り、フレイムキャタピラーから「糸」は手元に残し、後は売った。
ただ、フレイムキャタピラーの主な素材が「糸」の為、残った本体20匹で銀貨8枚にしかならなかった。
俺達は、冒険者ギルドで聞いたモンスター素材専門の服屋に行き、30着のウェイトレスの仕事着を依頼した。
まあ、服屋に有ったメイド服を元にして改良したデザインだから1週間で出来るみたいだ。
それと、デザインを決める時に、舞とリナが熱く燃えていた。
……あのリンが、引いていたよ。
翌日、元公爵令嬢サーディミア改め喫茶店の奴隷店長サディは、俺達に相談に来た。
「喫茶店のコンセプトとかはどうするの?」
「内装は少女趣味全開で単独野郎の入店お断り」
「……マジ?」
「大マジ」
「でも、それだと売上が……」
「本人達が、売上向上を目指して、真面目に頑張った結果なら赤字でも構わない」
「……どういう事?」
「剣と魔法の世界に転生した日本人男子が憧れる夢の1つは何だ?」
「……ハーレム?」
「正解。しかし、傍目にはハーレムでも、俺は舞とリナとしか結婚する気は無い」
俺の後ろでは、舞とリナが赤面しながらクネクネしている。
「……」
「だから、奴隷の皆には、ハーレム以外の生き甲斐が必要になる」
「あ! それが、喫茶店なのね!」
「そういう事だ」
「それで『内装は少女趣味全開で単独野郎入店お断り』なのね!」
「ああ。そんな訳で酒は出さないし、閉店時間は他の店よりも早くする」
「分かったわ」
「だから、皆には『大切な人』が出来たら許可するつもりだ」
「……じゃあ、私にも運命の人が!」
「今、奴隷になっている以上は、サディの祖国には運命の人は居ないだろうな」
「……ソウダヨネー」
まあ、内装が少女趣味全開だったとしとも、入店する野郎の中身がイケメンなら……
翌日、2ヶ所から文章の違いがあれど同じ意味の手紙が届いた。
1つは王都のビアンカで、もう1つが王宮からだ。
内容は、王都で「侯爵位就任披露宴」をしなければならないみたいだ。
俺は執事に後を任せて、俺達は急ぎ王都を目指した。
数日後に王都に到着して、ビアンカに詳しく聞いた。
どうやら、新しく爵位を持つ貴族になると、披露宴を開くのが伝統らしい。
更に、恵梨香と聖に、聖良とギルの「爵位就任披露宴」は既に終わっているらしい。
そして、薄情なあいつらからの手紙を開くと、内容が「自分達の事は自分達でやる。
だから、そっちも自分達でやれ」だった。
だから、恵梨香達は、この王都にタウンハウスという王都用の屋敷を持っている。
「既に、セレステア様が幾つか屋敷を押さえているから商業ギルドに行って選んできなさい」
「分かった」
俺達は移動して商業ギルドに到着した。
「ようこそ。王都の商業ギルドへ。
今日は、どの様なご用件でしょうか?」
面倒臭いから、最初から身分を明かす。
「……失礼いたしました。個室にて対応させて頂きます」
貴族としての身分証を見せたら、見事な掌返しな対応だった。
「先程は大変失礼いたしました。
改めてお伺いします。どの様なご用件でしょうか?」
「義母セレステアから話が有った筈だ」
「は、はい! 畏まりました。
直ぐに御用意いたします」
カウンターで対応した受付嬢が、退室して5分後に、知らない野郎が入って来た。
「これからは、私、不動産を担当するビスマルが対応いたします。
……さて、フロンディーラ辺境伯夫人であるセレステア様からお話は伺っておりますので、移動をしましょう。馬車の用意も出来ておりますので」
「分かった」
……リンとロゼは留守番となった。
「……以上が、セレステア様が御用意された物件です」
セレス姉さんが用意したタウンハウス候補は3つ有り、どれを選んでも問題が無かった。
つまり、セレス姉さんは「しっかり悩めよ、我が愚弟よ!」と、善意から嫌がらせをしている訳だ。
此処で俺は思い出した。
正室が領地の領主館を、2番目が王都のタウンハウスを取り仕切ると。
それを思い出すと、選ぶべき屋敷は1つしかなかった。
それに、リナも気付いているみたいだし、リナに聞くと俺と同じ屋敷を選んでいた。
それなら……
「この屋敷にする」
「畏まりました。では、話を詰める為に商業ギルドに戻りましょう」
商業ギルドに戻ると中は騒然としていた。
「なあ。いい加減に首を縦に振れよ」
「……拒否します」
「月に金貨3枚与えると言っているんだぞ」
「……拒絶します」
「それに、そっちの奴隷もきちんと面倒見てやるから」
「……辞退します」
どうやら、リンはロゼとセットで勧誘を受けているが、塩対応で断っているみたいだ。
「此方にも我慢の限度が……」
……と、割って入らないと。
「待たせたな」
「ルカ様!」
「我が主!」
「……誰だ?」
「この2人の主だ」
「お前みたいなガキがか?」
「……情報収集が3流以下か」
「なんだと!」
「事実だ」
そうなんだよな。
俺の名前の「ルカ様!」で、気付いた連中がバカ商人から離れ始めて、バカ商人の後ろには3人しか居ない。
「……良いだろう。それなら金貨10枚でどうだ?」
「……話にもならないな」
「それならば金貨20枚でどうだ?」
「ゴブリン1匹から2匹になっても同じだろう?」
「……金貨50枚だ!」
「スケルトンに算数を学び直させて貰ってこい!」
「「「「「「……ぷっ」」」」」」
思わず我慢出来ずに、笑ってしまった奴らが周りに居た。
「……私には、高名な貴族と懇意にしているが、その意味は分かるな?」
この3流以下商人が、商人としての「禁じ手」を使ってしまった。
それなら、俺も切ろう。
「そうか。俺もだ」
「……ふん! どうせ子爵程度だろう」
「それ程に自信があるなら、その高名な貴族様の名前を言ってみろ」
「良いだろう。私が懇意にしているのは……」
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