まあ、悪趣味よね
ユーチューブでたまに見かける、掃除用務員かと思っていたら、大会社の社長だった……ってオチのアレです。
囚われた別グループは、女性の奴隷達だった。
当然だが、彼女達の主である奴隷商人は殺されていたし、犠牲者が3人居た。
その3人は20代後半で、助かった奴隷達は10代半ばだった。
どうやら、一緒に居る内に情が湧き、経験済みの3人が犠牲になる事で、他の奴隷達の「前」だけは守る事が出来たみたいだ。
勿論、女性奴隷は「未経験」の方が遥かに高く売れるから、それも有るだろうな。
そして、彼女達の「主」は俺になっていた。
更に、彼女達は帰る家が無い上に頼れる親戚とかも居ないみたいだ。
「……ルカ」
「どうするの?」
「前例が有るだろ?」
「「……確かに!」」
奴隷達も不安な様だ。
「あのぅ。私達はどうなるのでしょうか?」
「そうだな。先ずは正式に俺の奴隷になって貰って働いて貰うよ」
「分かりました。それで……」
途中から言い難そうな態度だったが、察した俺は言った。
「夜はベッドの上とかで、働かなくて良いからな」
「本当ですか!?」
「ああ。働く場所は都市アルファーラの喫茶店だ」
「喫茶店ですか?」
「そうだ。後、最低限以上の衣食住を保障するから安心してくれ」
「分かりました」
「大丈夫だよ。全て本当の事だから」
「そうよ。安心しなさい」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
やっと安心したみたいだな。
そして、全員でアルファーラに戻り、正門の詰所で盗賊共の討伐手続きと処理が終わると商会の人達とは別れ、奴隷達は馬車に乗ったまま領主館に向かった。
「……どちらに向かっているのですか?」
「俺達の家だ」
「私達が、お邪魔にならないでしょうか?」
「大丈夫だ。部屋は有るから」
「それなら良いのですが……」
領主館に到着すると、奴隷達は見事に騙されたという顔になっていた。
正面玄関から入り、改めて自己紹介をした。
「俺は、ルーカス=イクス=フロンディーラだ。 最近になって侯爵位になった」
「「「「「「「……侯爵!?」」」」」」」
「勿論、公式の場以外では言葉使いを気にする必要はないからな」
奴隷達は、客分扱いで対応する事を伝えてメイド長に丸投げした。
そして、執事のエナクを連れて商業ギルドに向かった。
「商業ギルドに顔が知られているか?」
「は、はい」
「商業ギルドで、ある程度の土地家屋を買うから保護者的立場にいてくれ」
「それなら身分を明かした方が……」
「身分を明かしたら向こうの顔が見れない。
だから、俺が許可するまでは明かすな」
「……承知いたしました」
どうやら、俺の意図を察したみたいだ。
「ルカ様、商業ギルドに到着しました」
リンからの報告で馬車から降り、俺と舞とリナと執事エナクで商業ギルドの玄関から入り、残りは馬車で留守番だ。
「冒険者ギルドとはまた違う喧騒だな」
「……そうですね」
俺達は、受付嬢に聞いた。
「個人的に土地家屋を買いたい。担当の者は居るか?」
「……貴方が、ですか?」
「そうだ」
「冷やかしならお帰りください」
「何故、そうなる?」
「分からないのですか? この都市は温泉地として有名です。その結果、土地家屋は決して安くありません」
「確かに安くないだろうが、此方の目的等や俺達の事を知らずに門前払いはどうかと思うが?」
「確かめるまでもありません!」
「そうか。二言は無いな?」
「ありません!」
「分かった。執事のエナクさん」
少し離れていた執事のエナクを呼ぶ。
「……!?」
「どうかされました、ルカさん」
「此方の受付嬢が、確認するべき事柄を無視して門前払いを……」
「……本当ですかな?」
「あ、え、いえ、そ、それは……」
「此方の方々は、新しく領主に就任されたアールスバイド侯爵様に関わる方々なのですが?」
「失礼しました!? 直ぐに担当の者に!」
受付嬢が脱兎の如く、奥へと行った。
「確かに、身分を明かさない方が『顔』が分かりますな」
「まあ、悪趣味よね」
「リナ?」
「事実でしょう?」
「事実よね」
「マイまで」
軽く舞達に揶揄われていると、先程の受付嬢が戻って来た。
「大変失礼いたしました。部屋にご案内いたします」
「分かった」
俺達は右側にある扉から入り、1番奥の部屋に入った。
部屋に入ると、2人の男性が居た。
「初めまして。私は、この商業ギルドのギルドマスター『エンダレク』です」
「初めまして。私は、この商業ギルドで不動産を担当しております『ヒラガル』です」
俺達は、敢えてフルネームでは自己紹介をしなかった。
「挨拶が終わった所で謝罪させてください。
先程は、受付嬢が無礼な対応をしてしまい大変申し訳ありません」
「申し訳ありません!」
「謝罪を受け取るかどうかは、この後のそちらの『誠意』次第だな」
「一応、確認させてください」
「何を?」
「領主館の執事エナクさん。本当に、この方々は新しい領主アールスバイド侯爵様に関わるのでしょうか?」
「はい」
「……分かりました。ヒラガル、誠意を持って頼みましたよ」
「はい、ギルドマスター」
「失礼します」
こうして、ギルドマスターは部屋から退室して、受付嬢も退室した。
「……さて、どの様な土地家屋をお求めで?」
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