私の心は既に決まっているわ!
現実だと、「1」の次が「2」に、ならない事が結構ありますよね。
「……ありがとうございました!」
「ルカ君も、頑張ったよ」
「ルカ、凄いじゃない!」
「でも、負けたけどね」
「何を言っているのよ。剣聖の称号を持つお父様に一撃入れたのよ! 寧ろ誇るべきよ!」
……接待ですが、何か?
ルナデューク侯爵の戦闘スタイルは、見た限りは、レイピアみたいな細剣を使っての突き主体の戦闘スタイルだと思うが、娘と同じ年の子に本気の攻撃などしないだろうから分からないけどな。
まあ、俺も本気じゃなかったけどな。
いや、本気で模擬戦をやったよ。
ただ、陸奥○明流的な意味での「本気」じゃなかっただけで。
それに、技術向上を目的としての本気を出したから大丈夫だろう。
「ルカ君」
「ありがとうございます、ゼルさん」
挨拶の為の握手した時に耳元でルナデューク侯爵が囁いた。
「リーナの前だから我慢するが、次は本当の本気を見せてくれよ、ルカ」
……バレてたわ。
「……?」
リナは、頭に「?」マークを浮かばせながら練武場での模擬戦は終了となった。
またまた風呂で汗を流した後、夕食を頂くのだが、この夕食の場でルナデューク侯爵とリナが居る事の説明がされた。
何でも、この都市フロンディーラは毎年、この時期に武闘祭を開いているみたいで、ルナデューク侯爵は毎年通うくらい楽しみにしているみたいだ。
それで、この時期になると、貴族として、隣接する領主として、何よりも友人として来ているらしい。
後でガル義兄に聞いてみたら、表向きは辺境故の冒険者達のガス抜きで、裏では他国の間者に対しての示威行為らしい。
ま、ガル義兄も貴族で辺境伯だし仕方ないよな。
因みに、武闘祭の会場は冒険者ギルドの練武場みたいで、武闘祭開催に合わせて冒険者ギルドの練武場を税金で増改築したみたいだ。
それで、増改築で使った税金を回収する為に、専用の出入り口を最初の段階で作って週2で一般開放して、冒険者以外の人達に有料の指導員付きで解放しているらしい。
夕食も終わり、後は寝るだけとなった夜に、俺の部屋に侵入者が現れた。
「誰?」
「私よ」
「だから、誰?」
「だから、私よ!」
「名前は?」
「わざとやってない、ルカ」
「名前は?」
「もう! リナよ!」
まあ、名乗ったし、扉を開けるか。
「リナ、どうしたの? それに貞淑な貴族令嬢としては良くないぞ」
「むう……」
「とりあえず部屋に入ったら?」
「……そうする」
俺はそう言ってリナを部屋の中に招き入れると、出入り口の扉は全開にして通路にリナの侍女が居たから出入り口前まで呼び、俺はメイドを呼んで紅茶を淹れて貰った。
ラノベ愛読者の俺は、地雷を踏むマヌケでは無いぞ。
「それで、どうして俺の所に来たんだ?」
「実は……」
話の内容は、簡単に言えば「剣聖」か「貴族令嬢」の、どちらで生きるか迷っているらしい。
……あれ?
リナは、俺の妹でもないし、中学生なのに妹系18禁ゲームをプレイする変態では無い筈だが、何故、人生相談を俺にするんだ?
「貴族の世界を知らない俺に相談されても分からないが、両親と相談するのが1番良いと思うぞ」
「……そうよね」
「ただ……」
「ただ?」
「ただ、どんな時も俺はリナの味方だ」
「……ルカ、ありがとう!」
リナは、そう言って部屋から出ていった。
扉を閉めた通路からは、リナの「ユリア居たの!?」と言う声と、侍女ユリアからの「私はリーナお嬢様の専属侍女ですから」と言う声が聞こえた。
……若干、執事な言葉が混じっていたが無視だ。
翌日
俺の前には、笑いを堪えるガル義兄と俺がサインするだけの契約縁組と、微妙な表情のルナデューク侯爵と、満面の笑みのリナと、そのリナの手には俺のサインが必要なだけの婚約証明書を持っていた。
「どういう事?」
「ルカは、リーナシア嬢に言っただろ?」
「何を、ガル義兄」
「ルカが、リーナシア嬢に『ただ、どんな時も俺はリナの味方だ』とな。メイドからの報告は受けているぞ」
思わず後ろに控えている昨日のメイドを見ると、良い笑顔で親指を立てた。
「ルカ君。男なら、自分の言った事に責任を取らないといけないよね?」
「ルカ、男を見せる時だぞ」
「ガル義兄……」
「ルカ……」
リナ、そんな辛そうな顔をしないで欲しい。
それと、ガル義兄からは聞いている、この世界は一夫多妻制だと。
……でも、俺には舞がいるしなぁ。
ん?
でも、勇者召喚するのは多分、王家だよな。
王家と平民だと、越えるには不可能と言える程の大きな壁が存在するよな?
今から4年も先の事をぎゃあぎゃあ言っても無駄に終わるのなら……
「ガル義兄」
「なんだ、ルカ」
「人払いを」
「……分かった」
ガル義兄が、目線を送ると、メイド達は退室した。
「リナ。これから話す事は重要な内容だ。
だから、聞いた以上は、心変わりしても俺から離れる事は出来ない。
それでも、俺のパートナーでいるか?」
「勿論よ! 私を見くびらないで!」
「俺には、既に心に決めた女性が居る。それでもか?」
「だ、誰よ、その女は!」
「それも含めて、だ」
「……分かったわ。私も貴族の娘。侯爵家と言えども三女だから、正室になれない可能性の覚悟は出来ているわ」
「リーナ、本当に良いのかい?
ルカ君が、どんな重要な話をするか分からないけど、私の力を使えば……」
「止めてお父様! 私はルカの心を好きになったの」
「……分かったよ、リーナ」
「さあ、話してルカ」
「本当に良いんだね、リナ」
「私の心は既に決まっているわ!」
「……分かった。話とは……」
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