必ず幸せにする!
シリアス。
モンスターの姿だった裕哉の身体は、戦っていた時の人族の身体になった。
……少量だが、傷が塞がらず血を流している。
つまり、あの黒い宝玉は裕哉の不死身を支えていた訳か。
裕哉は起き上がる。
「封法」
「……なんのつもりだ?」
俺は裕哉の質問に答えず、力を封印し、武器である刀や防具も「倉庫」に仕舞う。
「もう一度聞く。なんのつもりだ?」
「最期の情だ。裕哉、お前を日本人として殺してやる」
「何…を……言……」
「蒼真……」
「御庭上流後継者、御庭上蒼真……参る!」
「……巫山…がっ…ぐが…ぎぃ…がは……」
舞side
中1の10月頃までは、蒼真が継ぐ流派の稽古を見た事あるけど、違う!
あんなに美しく、そして怖く無かったわ!
裕哉の踏み込んだ左足の親指を、蒼真が踏み潰したり、裕哉の左ストレートを、蒼真は外側に避けてテコの原理を使い左肘を破壊して、蒼真の右掌底で裕哉の左肋骨数本を折った。
ルカside
「ぼ、僕の知る…お、御庭上流じゃ……ない」
「当たり前だ! 平和な日本に、素手で人を殺す技を覚悟の無い者に教えるものか!」
「……」
……終わらせよう、裕哉。
「……」
「……くっ」
「さらば、裕哉」
「ぼ、僕は……」
「……御庭上流奥義・鬼神掌覇!」
「……がはっ」
倒れそうになった裕哉を正面から抱き支えるが裕哉からは、もう禍々しい気配は消えた。
「……裕哉」
「そ、蒼真。1つだけ約束しろ」
「約束?」
「そうだ。か…必ず舞をし…幸せにしろ」
「必ず幸せにする!」
「……そ、それなら良い。 舞……好…き……」
そして、俺の後ろに居た舞を見つめた後、裕哉の人生は終わった。
「蒼真。裕哉は何を?」
「皆に済まなかったって」
「……そう」
「裕哉、バイバイ」
「裕哉、またな」
「……裕哉さん、さようなら」
聖良が別れの言葉を紡ぐと、それを待っていたかの様に、裕哉の身体は白い灰となり散った。
それなりの時間が経過すると、控えていたリンが言った。
「城の掃除を私達がしてきますので、ルカ様達は、此処でお待ちください」
「分かった」
俺がそう答えると、リン、ユイ、アスナ、ロゼが謁見の間から出て行った。
更に時間が経過すると、今度はエルザとマリウスが話し掛けて来た。
「……ありがとう」
「俺は殺しただけだ」
「それでもよ」
「……そうか。これからはどうする?」
「どこか、森の奥でひっそりと暮らそうかと考えています」
「……それなら、辺境都市フロンディーラがお勧めだ。あそこは、下手な貴族が口出し出来ない上に、話が分かる領主だ」
「ありがとう。そうするわ」
「……恩に着る」
「行くのなら、領主館に言って俺の名前を使え。便宜を図ってくれる」
「助かるわ」
「そうさせて貰うよ」
3時間後に、城に残っていた全てのモンスターを討伐して、書類・魔道具・金銀財宝の全てを回収したリン達が帰ってきた。
因みに、アスナの提案で、地下をかなり徹底的に調べたが、秘密通路等は無かったらしい。
「……帰ろうか」
「……うん」
「……はい」
舞と聖良が返事をして、残った皆は頷いた。
……馬車を預けた宿屋に戻り、5日間完全休日にした。
宿屋をチェックアウトすると、エリザとマリウスは、俺が用意した手紙を受け取り辺境都市フロンディーラを目指し出発した。
エリザとマリウスを見送った後、俺達も王都に向かって出発した。
……3週間後、王都で魔王討伐パレードが行われ、種族差別を無くす為、リン達もパレード用の馬車に乗った。
因みに、パレードには貴族的な衣装を勧められたが、無意味に貴族の株が上がるのは変だと思ったから冒険者の衣装でパレードに出た。
パレードの3日後に、王城の謁見の間で……
「魔王討伐をよくぞ成し遂げた!」
宰相が前に出て言った。
「それでは報奨式を執り行います」
この報奨式で、俺には侯爵位を、舞、リナ、恵梨香、聖良、聖、ギルには伯爵位を頂いた。
領地は、他の貴族とかの兼ね合いから東と南北に分かれた。
俺と舞とリナは結婚するから王都と辺境都市フロンディーラの中間辺りの領地を、恵梨香と聖はパレードを機に婚約発表して南の領地を、聖良とギルもパレードを機に婚約発表して北の領地を与えられた。
……と、言っても、半分以上は貴族としての知識や経験に教養が無く、領地経営のノウハウも知らない為に、各領地に代官が送られる事になった。
恵梨香と聖に、聖良とギルの婚約祝いに、夜中にそれぞれの領地に文字通り飛び、従来の外壁から約2Km離れた所に新しくて頑丈で掘り付き外壁を土魔法で作った。
勿論、橋付きにさせて頂きましたよ。
まあ、数日後には王都でも大騒ぎになったが、無視した。
因みにセレス姉さんは笑っていた。
「「「「「「ルカ~」」」」」」
舞達にバレて、正座説教2時間コースだ。
……解せぬ。
???side
「あの方の封印が揺らいでいる!?」
「本当か?」
「はい」
「原因を徹底的に調べろ!」
「はい!」
これが切っ掛けで、あの方の封印を解ければ、その功績は儂になる。
そうなれば……
???side
……信じられん。
あの「存在」に掛けた封印が揺らいでいるなんて。
これは、早くお報せしなければ!
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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御庭上流奥義・鬼神掌覇とは……
両手での掌底に因る無空〇で、心臓を潰します。
放った後の姿はか〇はめ波です。