転生者として、頑張っても良いんだぞ。
何処にでもいる「バカ」
不意打ちからの攻勢であっさりと勝負が決まり、襲われていた2人から離れ、事情聴取を始めた。
どうやら、頭、つまり魔王の交代劇が起こったみたいで、襲われていた彼女は先代魔王の娘みたいだ。
しかも、魔王の娘なのに、性格が人族の平民寄りみたいで、とりあえず無害判定をした。
一緒に居た男性は、彼女の専属護衛兼世話係みたいだ。
それで、人族目線の犯罪は犯していないみたいで、これも無害判定にした。
「……それでどうするの?」
「全て終わってからにしよう」
「理由は?」
「今、教えたら離れた後だと手が出せないが、全て終わった後なら、最後まで居てやれる」
「「……そうね」」
……と、いう訳で。
「君達2人は避難して欲しい」
「エリザお嬢様、そうしましょう」
「……」
「エリザお嬢様?」
「……いいえ。私も行きます」
「エリザお嬢様!」
「私は魔王の娘です。力及ばないとしても確かめる責任があります」
「しかし……」
「……分かっています。既にお父様は居ないのでしょう。ですが……」
「分かった。同行を許可しよう」
「ルカ殿!?」
「当然、此方の指示に従って貰う」
「分かっています」
俺は後ろを振り向くと、何か言う前に舞達は頷いていた。
エリザとマリウスの準備をしている間に、リンには冒険者ギルドに説明をしに行って貰い、リンが戻ってくる頃には、エリザ達の準備が終わっていた。
「……出発だ!」
ガラガラガラガラ……と馬車で移動中なのだが、人だけで9人の大所帯になっている。
ガル義兄が、この馬車を用意してくれて助かったな。
本っ当~に助かっているよ、空間拡張とかを使った限定ど〇でもドアにはな。
一応は、この馬車は6人用だけど、流石に9人わ…なぁ。
そんな訳で、御者席には2人に屋根にも2人に、シリウスに1人をローテーションで回している。
まあ、シリウスの席は大抵がロゼが楽しそうに座っているけどな。
「楽しいのじゃーーー!」
【そうだろう】
因みに、馬車を引く馬の「黒曜馬」は、全く楽勝らしい。
何でも、この黒曜馬の親、つまり、ガル義兄の時の黒曜馬は、3つの馬車を連環して30人乗り、一昼夜休み無しで進み続けたらしいからな。
それで、基本的にはエリザとマリウスは、馬車の中の「家」に居て貰っている。
一応、監視兼癒しとしてコウガが出張しているから大丈夫だろう……多分。
それと、正当な理由が無い限りは、エリザ達は「家」から此方に来ない様に言ってあるし、此方からも定期的に顔を出している。
さて、たまに出現するモンスターを瞬殺しながら進んでいると、今日の目的地の町「クマリダル」が見えた。
泊まる宿屋も決まり、馬車を預けて俺達は冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに到着した俺達は、中へは俺、舞、リナ、リン、ロゼで入ったが、ロゼは経験値稼ぎの為だな。
「先程、この町に着いたが、何か注意事項は有るか?」
「そうですね……」
対応した受付嬢が舞とリナを見て言った。
「この町の領主クマリダル子爵様の次男エリンケス様は、女性に対して理解が高い方ですね」
「分かった」
これだから特権階級は……
「気持ちは分かるわよ、ルカ」
「ありがとう、リナ」
「どうしたのじゃ?」
「ロゼにはちょっと分かり難いか」
俺達は、ロゼに説明する序でにリン達にも伝える事にした。
「つまりな。受付嬢には『注意事項』について聞いたのに、領主の次男を褒めていただろ?」
「……うむ」
「つまり、その褒め言葉は逆の意味になる」
「そうよ。今回の場合だと、その次男は女性の言葉など全く聞かずに、権力を使って無理矢理に従わせる屑だという事よ」
「……な、なる程なのじゃ」
「まあ、大丈夫だ。俺は辺境伯の義理とはいえ息子だし……」
「私は、筆頭侯爵家の御令嬢よ」
「だから、安心してくれ」
「分かったのじゃ」
「リン達も分かったか?」
「勿論です、ルカ様」
「分かりました」
「分かったであります!」
……アスナ、完全に実家で引きニート状態と化しているな。
転生者として、頑張っても良いんだぞ。
俺は心の中で、アスナを残念な子扱いしながら、皆で注意事項を確認した所で、ロゼが何かを見つけた。
「所で、我が主よ」
「どうした、ロゼ」
「あの、偉そうに歩いている5人組は何じゃ?」
「あれは……」
統一された服と武装に、真ん中からズレた所を歩く執事らしき男と、中央で歩く品性の欠片も無い顔と服装……
「……リナさん?」
「この町1番のゴミ……でしょうね」
「俺の所為か?」
「違うと思うよ……多分」
「マイ~~~」
「来たわよ」
リナの声を聞いて、リン達を下がらせる。
「喜べ。ボクの女にしてやる」
「誰が誰を、だ?」
「決まっているだろう。貴様の左右の女と後ろに居る女達を、ボクの女にだ」
「断わる」
「良く聞こえなかったぞ。もう一度言え」
「断わると言ったんだ」
「……そうか。ボクの命令に従えないと」
「当たり前だ」
「……やれ」
屑坊が、そう言うと後ろのチンピラ3人が前に来た。
「今直ぐに逃げ出せば、命だけは助かるかもしれんぞ?」
「まあ、逃さないけどな」
「そう言う事だ、死ね」
「……お前らが、な」
「な……げばぁ……」
「がはぁ……」
「くばっ……」
3人のチンピラには、鳩尾への腹パンで沈めた。
「……はい、終わり」
「は!?」
「まだ終わって無いからな」
「覚悟は出来ているのかしら?」
「ルカ、やっちゃえ」
「そうだな」
「あわわわ……」
「お待ちください!」
「爺!」
???side
「実験体のオーガが脱走しました!」
「被害は?」
「この基地の秘匿が困難な程です」
「……分かった。いつもの処理をしておけ」
「は!」
「儂は、予定地に向かう」
「了解しました!」
……全く無能共が!
まあ良い。
あの方さえ復活なされば、儂の欲望のままに世界を蹂躙する事が出来る。
……全ては、あやつの言う通りだ。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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