魔法誓約書の誓いは絶対です。
ヲタク系女子なら、一度は言ってみたい台詞だと思っています。
誤字報告、ありがとうございます。
修正しました。
自業自得で偽善的なボランティアをした翌日に、今日泊まる予定の都市「シンギニル」に到着して門番から良い宿屋を紹介して貰ったが、何故か、その門番には大銀貨1枚が握られていた。
「流石は有料情報ね。良い宿屋だわ」
「そうね。女性冒険者が多いのも良い宿屋の証拠だわ」
「そうだな」
時間が半端だったから街を散策する事にしたのだが、妙に良い意味で身なりの調った冒険者が多く見掛けた。
気になった俺達は冒険者ギルドで聞く事にしたら、理由が分かった。
「5日後に、この都市でオークションが開かれます」
「それだけで?」
「実はどういう訳か、この都市で開かれる不定期で開催されるオークションでは、物にしろ、奴隷にしろ、掘り出し物が良く出品されるのです」
「それを知った貴族達が集まっているから、その護衛で雇った冒険者も身なりが良い訳か」
「そういう事です」
なる程な。
「ルカ」
「ああ。掘り出し物って言葉には興味を惹くな、マイ」
「うん」
「勿論、参加するわよね?」
「当然だ、リナ」
「楽しみだわ」
そうと決まれば……
「参加資格は?」
「既に予約は終了していますので、当日の受付で白金貨5枚を提示する事で、参加する事が出来ます」
「ありがとう」
そう言いながら、受付嬢の右手を包む様に握るが、何故か、受付嬢の右手に金貨が収まっていた。
なんやかんやで、箪笥預金ならぬ「倉庫預金」には白金貨で3桁後半、貯まっているから大丈夫だろう。
さあ、冒険者ギルドを出ようとすると……
「彼女を賭けて勝負だ!」
「は?」
「だから、お前に対して、ボクは彼女を賭けて勝負だと言ったんだ!」
「彼女とは誰だ?」
「勿論、翼人族の彼女だ!」
「……何故、アスナを賭けて勝負する必要がある?」
着ている服装から貴族なのだろうが、こいつは、奴隷法の強盗罪を知らないのか?
「それは……」
「それは?」
「彼女が可愛そうだからだ! 彼女を奴隷という鎖で拘束をして恥ずかしく無いのか?」
「別に」
「お前ぇ……」
この瞬間、アスナが間に出て言った。
「私の為に争わない……ぎゃ!」
俺は、アスナの頭に直下型ゲンコツを食らわせた。
……まあ、結果が分かっているからこその、悪巫山戯なのは分かっているが、空気を読め!
最後の情けで、助け舟を出すか。
「幾ら出す?」
「何だ?」
「だから、アスナを買いたいなら、幾ら出すんだと聞いている」
「……巫山戯るな! 彼女を金銭でどうにかしようなんて……もう許せない!
お前に決闘を申し込む!」
「……本気か?」
「当然だ!」
金貨1枚を握っている受付嬢が俺に近付いて話し掛けた。
「……奴隷を手放す事をお勧めします」
「何故だ?」
「彼は、この都市の領主シンギニル侯爵様の嫡男で冒険者でもありますが、婚約者が第5王女エスカリーナ殿下です。場合に因っては王国を敵に回す事に……」
受付嬢がそう言うと、リナが俺を引っ張り耳打ちした。
「それならちょうど良かったわ」
「どういう事だ、リナ」
「エスカは、婚約者を嫌っているのよ」
「……マジ?」
「大マジよ」
バカを無視して話していると、そのバカが文句を言ってきた。
「決闘を受けるのか、受けないのか、ハッキリしたらどうだ!」
それにしても、野次馬が増えているから、アスナのご主人として力を見せておく必要が有るな。
「その決闘を受ける!」
「正気ですか!」
「大丈夫」
「……もう、知りませんからね」
「彼女に嫌われたね」
「しょうがないよ、マイ」
そして、冒険者ギルドに併設されている訓練場に移動して、先程の受付嬢が審判役を買って出て、決闘に関する説明をしている。
因みに、この決闘の勝負に関係無く、奴隷法の強盗罪が成立しているが、その為には俺が、奴隷法の強盗罪が成立した事を宣言しないといけないがな。
お互いの決闘の準備が出来、魔法誓約書にお互いの名前の記入が終わると、審判役の受付嬢が言った。
「両者、準備が良いですね? ……始め!」
「卑怯者、死ね!」
「それは無理かもしれない」
「巫山戯る……ぎ……が……げぎゃ……」
「……俺の勝ちだな」
「勝者ルカ!」
「無効だ! 今のは油断していただけだ!」
「……そうですか。では、やり直しますので、早く立ち上がってください」
「分かっている。だから、早く回復しろ!」
「は?」
「だから、早く回復魔法かポーションを寄越せ!」
因みに、バカは元気だが、右腕と両足の関節を潰しているから立ち上がれない状態だ。
「それは出来ません」
「何故だ!」
「決闘の際に交わされた魔法誓約書に記入されています。この決闘に於いて、回復魔法やポーションの使用は一切禁ずる…と」
「そんな事、無視す……」
「魔法誓約書の誓いは絶対です。もし、破れば命を失いますがよろしいのですか?」
「……」
「では、改めて……勝者ルカ!」
「どういう事だ!」
「……パパ!」
シンギニル侯爵の登場か。
どうやら、誰かが報せたみたいだな。
「何故、ハゥングが……」
「決闘に因る結果だ」
「貴様、誰だ?」
「そこに寝っ転がっている犯罪者の決闘相手だ」
「……犯罪者?」
「ああ。そこのバカは、奴隷法の強盗罪を犯した」
「……本当か?」
「……はい」
中立の立場である受付嬢が答えた。
「……幾らだ?」
???side
「新たなる魔王ユーヤ様、万歳!」
「「「「「「「「「「「「「「万歳!!!」」」」」」」」」」」」」」
「命令だ。僕に従わない者は全て殺せ」
「は!」
「そして、先代魔王に忠誠を誓う者もだ」
「は!」
「新たなる魔王様」
「何だ?」
「どうやら、先代魔王には娘が居るみたいですが、如何しましょうか?」
「……殺せ」
「御意」
「軍を再編成し、防御を厚くせよ!」
「「「「「「は!」」」」」」
「近い将来、攻めて来る者が現れるだろうからな!」
クククッ……来るなら来い、蒼真。
生まれ変わって、更に強くなった僕が殺してやる!
そうすれば、舞の目が覚めるだろうからな。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。