まさか、起こって欲しかったの?
暴食は7つの大罪の1つです。
結局、雑談からの「まあ、泊まっていけ」になりカッサシス嬢は驚いていたが、アルゴリア侯爵も認めているからと、更に帰り道の安全が保障され安心したみたいだ。
それで、カッサシス嬢が、この城塞都市アルゴリアに来た理由は、公式には「業務提携に於いての契約更新」の為で、本当の理由はカッサシス伯爵、つまり父親が「折角だから、友人と遊び羽根を伸ばして来なさい」という親心だった。
それに契約更新といっても、契約書類にアルゴリア侯爵からサインを貰うだけだから責任を背負える者なら誰でも良かった訳だ。
そして、カッサシス嬢の友人とは、アルゴリア侯爵の父方の従姉妹の長女(14歳)だ。
名前が「シェリナ=ハイド=クロンズ」で、彼女の父親はアルゴリア侯爵の下で財務長をしている。
因みに、父親は名誉貴族の男爵だ。
序でに言うと、名誉貴族とは領地を持たない貴族を指す。
裏的な意味としては、他国に行って欲しくない優秀な人材に対して与えるのが名誉貴族な訳だから、子に継承権は無い。
それとリナが聞き出した事だが、カッサシス嬢は婚約者が居るが、相手が相思相愛な上に幼馴染みな為に、かなりの自由が許されているらしく、今回もそれで「お遣い」に出されたみたいだ。
3日後に城塞都市アルゴリアを後にして、俺達は彼女の実家である領地のカッサシスに向かった。
移動中は特に問題も無く、到着まで後3時間の距離でテンプレというかお決まりのアレが出現した。
「命が惜しければ、靴と着ている服以外を置いて消えな」
はい、盗賊共だ。
一応、第3者にして護衛対象が居る為に、台詞を最後まで言わせてやった。
「雷矢24連!」
「ぎっ……」
6人の盗賊共の両肩両膝に雷矢を放ち、舞達は剥ぎ取りをし、俺はアジトを吐かせた。
……約35分後
「カッサシス家に害を与えるゴミを片付けたという事で、待たせた事を許してくれるかな?」
「勿論です!」
無事に到着して、冒険者ギルドで盗賊共の首級を換金して、護衛依頼料を貰ったが、この後の特産品のご馳走に浮き足だった俺は護衛騎士に入れ知恵をした。
そして、護衛騎士のリーダーが……
「領地の周辺に巣食う盗賊団の1つを、領主であるカッサシス伯爵が次女『レティミナ=ヤレナ=カッサシス』様が、陣頭指揮を取り討伐なされた!」
「「「「「「「「「「「おおーーー!!!」」」」」」」」」」」
……冒険者ギルド前に、領主の紋章を付けた馬車が停まっていた為に、それなりの野次馬が集まっていたからな。
「……流石にちょっと恥ずかしいです」
領主館に向かう馬車の中で、カッサシス嬢の漏らしたこの一言で、侍女に生温かい目で見られたらしい。
そして、領主館に到着してカッサシス嬢が事情を説明すると、笑顔で歓迎され期待以上の特産品に因るフルコースを頂いた。
翌日、暴食に支配された俺達は、周辺の野生の赤い葡萄「スカーレットベリー」と、その赤い葡萄を食べるモンスターを丸1日掛けて4割を回収した。
代わりに、周辺で見かけ無かったオークを30匹を冒険者ギルドに売った。
勿論、草食系モンスターを4割も回収したから、肉食系モンスターも8割回収して、これも冒険者ギルドに売った。
「ルカ。料理長からレシピは聞いたから、ゆっくり楽しもうね。」
「おう!」
料理長からのレシピは、個人で楽しむ事と白金貨1枚で教えて貰えたみたいだ。
「初めまして。レティの婚約者の『カラルード=ミシャ=デンランザ』だ。君達の事は後輩から聞いているよ。だから、僕達にまで噂になっていた『双閃華』に会えるなんて光栄だよ」
まあ、その双閃華の片方は筆頭侯爵のルナデュークが父親だもんな。
どうせなら、好印象を与えたいと考えるのが普通だ。
お互いの自己紹介が終わると、俺と彼との模擬戦をする事になったが、お互いに三味線を弾いた為に爽やかに終わった。
そして、前世では異世界系ラノベ愛読者としては何かイベントが起きるかもしれないと思っていたが、何も起こらず、3日後に別れの挨拶をカッサシス家として出発して、2日後の朝食後の移動中に……
「何も起こらなかったね、ルカ」
「そうだな、マイ」
「まさか、起こって欲しかったの?」
「そんな訳無いだろ、リナ」
「それなら……」
「会話中失礼します、ルカ様」
「どうした、リン」
「進行方向の左側にある森から多数の魔力反応を感知しました」
「……本当だ」
「……本当だよ」
「……本当だわ」
「どうされますか?」
「マイ、リナ。美食後の運動にちょうど良くないか?」
「そうだね」
「そうね」
「リン、ユイ、アスナは?」
「ルカ様のご意思のままに」
「賛成です」
「賛成であります!」
「シリウスとコウガは?」
【賛成だ】
「キャン!」
「それなら暴れるか!」
……イベントは発生していたよ。
しかも、スタンピード。
原因は……聞かないでください。
俺も舞もリナも反省していますから!
「生態系を崩す程の乱獲は止めような」
「そうだね」
「そうね」
唯一の救いは、リンやユイやアスナがスタンピードという超乱戦を経験出来た事くらいだな。
「彼女を賭けて勝負だ!」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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