……それじゃあ、仕方ないわね
やっと……
「貴様は!」
「誰だ?」
「ルカ様。あの時、似非勇者を連れて行った女魔族です」
「ああ! あの時の……」
「おい!」
「「はっ!」」
女魔族の後ろに居た魔族2人が裕哉の下に向かい何かを掛けると、裕哉が自力で起き上がった。
「蒼真ぁ……てめぇを殺す!」
「来いよ、裕哉」
裕哉は腰に下げていた剣を抜いた事を確認した俺もまた剣を抜く。
……剣での攻防を1分程すると、裕哉は距離を取り、魔法を放つ。
「喰らえ! 火球」
「水球」
「何ぃ!?」
「馬鹿か。確かにお前には『勇者』の称号を持っているが、積み重ねた経験が無い。
謂わばLv1の勇者だ。
一方俺は、実戦も充分に熟し積み重ねた経験がある、Lv20の魔法戦士とも言える。
このレベル差が、勇者の称号だけで埋まると思っているのか?」
「くっ! お前ら、蒼真を殺せ!」
「に、逃げろ……」
勿論、俺達が魔族を放置する訳が無い。
既に、舞達が雑魚魔族は始末し、女魔族は拘束済みにしてある。
「ち! 役立たずが!」
「どうした、勇者様」
「黙れーーー! 聖剣剛撃!」
この聖剣剛撃は、勇者の称号を持つ者が最初から持ちスキルとして存在する。
まあ、戦士系の「パワースラッシュ」みたいなモノだ。
そして、この期に及んでの「一撃」が、「聖剣剛撃」かよ……
裕哉は跳躍し剣を大上段に振り上げ、俺の前方で振り下ろす。
「死ねぇーーー!」
「……天上院流初伝『狼牙』」
「なっ……ぎゃあああーーー……」
……相手が幼馴染とか関係無い。
相手が「殺意」を向けて来るのなら、俺も「殺意」で返す。
それが、前世からの……いや、連綿と続く御庭上の矜持だ!
「た……助けて……くれ、……ま、舞……」
「裕哉!」
俺は、舞に視線を送る。
「……」
「ま、舞ぃ……」
「……!?」
「ぎ……」
「く……」
「がぁ……」
「あ……」
「Gu……」
突然の絶大な魔力の重圧に、意識を保っているのは、俺、舞、リナ、リン、ユイ、シリウスだけで、他は、魔力の重圧に耐えられず気絶している。
そして、上空から1人の魔族が降り立つ。
「……ば、バクバトス様!」
自らの拘束を無理矢理引き千切り、女魔族は、上空から来た魔族に縋り付く。
「どうした、ルゼ?」
「申し訳ありません、バクバトス様!」
「……うむ。魔王様の言われた『コレ』は回収する」
「お待ちください、バクバトス様!」
「……そうだな。ゴミ掃除ぐらいはして於かなくてはな」
そう言って、女魔族は薄く笑い、バクバトス様と言われた魔族は女魔族を置き去りにして、裕哉に何か液体を掛けて持ち上げて、そのまま20mぐらい上空に移動すると……
「……バクバトス様?」
「獄炎球」
黒い炎が、バクバトスの手から中庭に着弾した瞬間、黒い炎は直径3mの球状になり、その直径を一気に広げた。
「ば、バクバトス様ーーー……」
バクバトスは、結果を見ずに裕哉を荷物みたいに持ち、この場から立ち去り、女魔族は拘束を無理に引き千切った代償に抵抗出来ず、黒い炎に焼かれ炭と化した。
「ちぃ……大水球!」
バシュ!
「消えてないよ、ルカ」
「それなら……空域結界陣!」
「まだよ!」
ピシ……ピシッ……
……それ程、保ちそうに無ぇな。
(良いか?)
《仕方ないですね》
……母さん、見ててくれ!
「古き神代より継承せし言の葉を、99代目の御巫ルカ=グランフィリアが紡ぐ。
……神紋解放!」
俺の額に神紋が浮かび神域への扉が開く。
「「「え!?」」」
「時軸の運命を支配せし女神アマノウズメよ! 眼前の黒き炎に終焉を告げよ……絶界封滅!」
黒い炎よりも暗い闇が包んだ瞬間、黒い炎は消滅した。
「「「なっ!?」」」
「……神紋封印 ……終わったぞ、マイ、リナ、リン、ユイ、シリウス」
その後、重傷を負っていた領主「コータレナ=コカラ=ファングレプ」を始め、他の重傷者達も回復魔法が間に合った。
街の方も、重傷者には銀貨1枚で治癒魔法を掛けた。
軽傷者までは面倒見きれんから無視した。
領主達や、アムリナとネルナも参加して街の復興に尽力を尽くした。
俺のあの「力」に付いては、舞達は落ち着くまでは待って貰っている。
5日後、必要最低限で緊急を要する事柄は終わり、一息付いた夜……
「ルカ。私達に教えて」
「ああ。あの『力』は俺の血を『扉』にして神々が座す神域と繋げ、誓約を交わした神の権能を顕現したんだよ。まあ、精霊魔法に近いかな?」
「……ちょっと待って!」
「どうした、リナ」
「……まさか!? それだと……いや……でも……そうなると……」
どうやら、リナには思い当たる節が有るみたいだ。
「ルカ。貴方は幻の一族『グランフィリア』なのね?」
「ああ」
「やっぱり。つまり、ルカのお母様であるルーネさんがグランフィリアの一族。
しかも、族長の血統ね」
「正解」
「でも、そうなると……」
「女性にしか使えない『力』が、男性である俺が何故、使えるか……だろ?」
「そうよ」
「それは、母さんも俺も分からない」
「……それじゃあ、仕方ないわね」
「次は私の番よ」
「この世界の神様の力を借りるのに、何故、私達の日本の神様の名前が存在するのよ?」
「マイ、先ずはな。俺が神々の力を借りるんじゃない。俺が神々を使うんだ」
「借りるじゃなく、使う?」
「そうだ。そういう契約なんだ。
次にだ。何故、日本の神々の名前なのかは、神々の名前の悪用を防ぐ為だ」
「どういう事?」
「つまり……」
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天上院流初伝『狼牙』説明
この「狼牙」を試合以上の場で放てると初段となります。
流れは、相手の振り下ろす剣を下から自身の剣で弾き、そのまま振り上げた剣で、袈裟斬りにする技です。
絶界封滅と神紋封印は……造語です。
今後も、こういった造語が出ます。