御椀を持参している……売ったらー!
基本的に、固い黒パンに塩辛い干し肉に、塩味のほぼ野菜無しのスープです。
とりあえず、俺は笑われた怒りを抑えて女神様に聞いてみた。
《次の都市で、かなりの軍資金が必要です》
(分かった)
……軍資金って、何を買わされるんだ?
ティファニーのオープンハートネックレスか?
それとも、給料3ヶ月分のダイヤの指輪か?
それとも、GU○CIとかのブランド系のバッグや服か?
……あ! 此処は異世界だった。
次の都市まで、高額モンスター狩りと盗賊狩りだな。
俺は、箱から寝ているダークエルフの少女を背負い、馬車を「倉庫」に仕舞うと今度は入った。
お馬さんを引き連れて皆の所に戻ると、最初は笑顔で向かいれてくれたが、肩から覗くダークエルフの少女を見て、2人の般若が現れた。
「ルカ~」
「また……」
……はい。初犯じゃないっす。
昔、リナの領地に遊びに行った時に、向かう途中で商隊に見せ掛けた盗賊共と遭遇して狩ったら、馬車の中には捕らわれた奴隷のエルフの少女達が居た。
今は、その少女達はルナデューク侯爵の領地の屋敷で、メイドとして働いている。
「「「はあ~」」」
「仕方ないだろ」
「そうだけどね……」
「ダークエルフ……よね?」
「多分な」
そう答えると、舞が笑顔になった。
「ルカ!」
「マイ、その反応は何?」
「完結がほぼ絶望の、あの作品も読んだわ」
「それなら……」
「「雷帝アーシ○ス・ネイ!」」
俺と舞は固く握手をした。
「でも、分かっているわよね?」
「当然だ。強要はしない。でも……」
「彼女が望んだら?」
「「一緒に育てよう!」」
「ルカにマイ、説明して」
……俺と舞は熱弁した。
「ルカ様、夕食にしませんか?」
「悪い、リン。夕食にしよう」
夕食中に、リナからも本人の希望が最優先という事で、認めて貰えた。
もし、彼女が望んだら……
因みに、読んだ当時の舞には、彼女の勇姿と健気な心象がぶっ刺さったらしい。
後は寝るだけの時に、ダークエルフの少女は目を覚ました。
「……此処は?」
「目が覚めたのね」
「安心しなさい。もう、貴女を苦しめる者はいないから」
「はい、お水です」
「……ありがとうございます」
ダークエルフの少女side
……何か温かいな。
……良い匂い。
……足が伸ばせてい……
足が伸ばせている!?
此処は何処?
私、箱の中に居た筈よね?
何故、ベッドに?
優しそうな人族……
……え!? もう、苦しまなくても良いの?
あ、黒猫人族だ。
冷たくて美味しい水。
……私を奴隷にしたクズは?
ルカside
……もう良いかな?
「初めまして。暫定だが、君のご主人様になったルカだ」
「……」
「先程、彼女達が言っていた様に、君を苦しめる気は無い。信じて欲しい。後、前の御主人様は死んだよ」
「……」
まあ、最初は警戒するよな。
「リン」
「はい、ルカ様」
リンが予め、新たに用意していた脂肪を削ぎ落としたオーク肉入りの野菜スープを出す。
但し、煮詰めてドロドロになったやつだ。
「毒は入っていないし、ドロドロだがオーク肉と野菜のスープだ。どうぞ」
「……」
渡しても食べようとしないな。
ドロドロだが、味付けを調整して美味いんだがなぁ。
……仕方ない。
「命令だ。ゆっくりと食べろ」
「……!」
先ず、奴隷は御主人様が死亡すると、次に奴隷の奴隷環、もしくは奴隷紋に魔力を流した者が、暫定で新しい御主人様となる。
しかし、この状態で放置すると、衣食住の世話をしても3ヶ月後に奴隷は自動で死亡する。
奴隷の死亡を回避するには、奴隷商に売るか、正式に契約して改めて奴隷の御主人様になるしかない。
さて、きちんとした契約に基づいた奴隷なら、俺の命令に従う筈だが……ゆっくりと食べ始めたな。
そして、食べ終わった。
「まだ欲しいか?」
「……」
「命令だ。正直に答えろ」
「……ほ、欲しい…です」
「リン」
「はい、ルカ様」
……合計5杯、食べた。
「良く眠っているな」
「ゆっくり眠らせましょう」
「そうね」
「マイよろしくな」
「任せて」
「お休み」
「「「お休みなさい」」」
野営用の看板を立てて、馬車に結界を張ったから大丈夫だろう。
それに、馬車の外には黒曜馬オブシディア(舞が名付けました)やシリウスも居るしな。
因みに、馬車の中では、子狼のコウガが既に寝ていたりする。
翌日
朝食時に、昨日の連中が来たから、野菜スープを有料で売って、俺達も食べようとしたら、この野営地に居る全ての人達が集まっているし、御椀を持参している……売ったらー!
昨日の家族には1杯を銅貨1枚で、それ以外には1杯を大銅貨1枚にして売った。
……完・売!!!
危うく自分達の分も売りそうになった。
因みに、あの家族には護衛する冒険者は居ないみたいだったから聞いてみたら、大銀貨1枚出してオマケみたいな感じでの同行らしい。
……まあ、移動距離を聞いたら、大銀貨1枚じゃあ、誰も受けないだろうな。
朝食を食べ終わると、直ぐに移動の準備が始まり、終了すると移動を開始した。
家族が最後尾だったから、俺達は、その家族の後ろに付いた。
「ありがとうございます、ルカさんに皆さん」
……万が一が有ったら、目覚めが悪いだろ?
道中は、モンスターや盗賊共にエンカウントする事なく、目的地の街「アガルタナ」に到着した。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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