良いから寝とけ!
美しさは罪?
後、既に他家に嫁いだ長女と次女がいて、まだ王都の学園に通っている次男がいるらしいが、所用が有って、明日には帰ってくるみたいだけどな。
特に、その次男が優秀で自慢された。
しかし、そんな事を長男であるカージルが知ったら不愉快に思うじゃないかと見ると、若干顔が赤く、少し震えていた。
表情や態度に表すのは貴族として、また次期後継者として良くないが、やはり不愉快なのだろうと思っていたら、違う理由でダメだった。
「し、真実の愛を知った!」
……はい!?
「リーナシア嬢! 貴方こそが、ボクの運命の人であり、真実の愛を捧げるのに相応しい女性だ!」
当然、場の空気は「しーん!」となった。
「さあ、リーナシア嬢! ボクの手を取って幸せな明日を歩こうじゃないか」
「い、いきなり何を言っておるのだ、カージル」
「そうですよ、カージル」
「カージル兄様?」
「カージル様。此処に来る前に、またお酒を嗜われたのですか?」
婚約者が、フォローしてくれたが……また?
「ボクは本気ですが?」
「カージル様!」
「さあ、周りは静かになりました。これからのボク達の事を話し合いましょう」
「お断りします」
「「「「え!?」」」」
「い、今、何と言いましたか?」
「お断りします、と答えたわ」
「ボクは、次期伯爵だぞ」
まあ、確かに伯爵家嫡男の嫁という地位は確かに女性としては勝ち組だが……
「私、男性に対して爵位は求めていません」
「し、しん、信じられない! 伯爵だぞ!
冒険者如き底辺には、手の届かない地位だぞ!」
あらら、もうメッキが剥がれ始めたな。
「マリンピアという婚約者が居るが、こんなのは次期伯爵という身分を飾るアクセサリーでしかない。この女は頭だけは良いからな。
領地に押し込めた後、王都でボクと楽しく過ごそうじゃないか!」
「カージル様……」
酒を飲んで、本当に酔っていたとしても酷いもんだな。
「……最低ね」
同感だな。
「……そうか! その男に脅されているだな」
「違います」
「いいや! 君みたいな美しい女性が、こんなガキと一緒に居る理由は、それしか無い!」
おいおい、断言しやがったぞ。
「おい、貴様!」
「俺の事か?」
「そうだ! 貴様と決闘だ!」
「正気か?」
「当然だ! 貴様を殺して、リーナシア嬢を助け、ボクの嫁にする!」
リナを見ると頷いている。
「良いだろう。その決闘、このルーカス=イクス=フロンディーラが受ける」
「フロンディーラだと!」
「カゴランダ伯爵、この正式な決闘の見届人になっていただけますね?」
「あ、いや、その……」
「決闘で俺を殺し、婚約者であるリーナシア=クロス=ルナデュークを奪われる訳にはいかないからな」
「「「ルナデューク!?」」」
「見届人を引き受けてくださいますね、カゴランダ伯爵?」
止めと言わんばかりに、リナが念押しをした。
「……分かった」
領主館の中庭に移動し、一応「殺人」は無しとなった。
お互いに模擬戦用の長剣を持ち、向こうは鎧を装備している。
……俺は要らん。
当たらないから必要無いだろ?
まあ、当たっても問題無いけどな。
「これよりカージルとルーカスの、け、決闘を開始する。準備は良いな? ……始め!」
「死ねぇ!」
開始の合図と共に、カージルに大上段に構えつつ飛び込んで来た。
……が!
ギリギリで躱しながら剣を振り上げ、カージルの肘関節を強かに打ち付ける。
「ぎっ!」
更に、打ち付けた反動を利用して、一歩踏み込み胸部を強打して倒して、胸部を足で踏み、剣の切っ先をカージルの喉元に当てる。
「俺の勝ちだな」
「勝者ルーカス」
「無効だ! 今のはボクが油断していたからだ!」
「カージルよ……」
此処で、中庭に乱入者が現れた。
「見苦しいよ、カージル兄さん」
「「シージル!?」」
「シージル兄さん!?」
「シージルさん!?」
「到着は明日だった筈?」
「……ちょっと急いでいたからね」
「シージルなんでどうでも良い!
それよりも、決闘のやり直しだ!」
「しかし……」
「別に構わん。その代わり、今度は殺す」
「いえ。その必要はありません。カージルには未来がありませんから」
「どういう事だ?」
「実は……」
内容を簡単に言えば、カージルが学園生の頃にやらかした悪事が今更露見して、正式に調べた結果、最低でも鉱山労働行きが決定した。
悪事の内容が、脅迫や強盗に、公文書偽造に、強姦に殺人と、まあ貴族の子息とは思えない内容だな。
そんで、シージルと仲が良かった先輩が王族とのコネが有って、交渉した結果、カージルは表向きは「病死」となる事が決定した。
カージルの婚約者であるマリンピアは、そのままシージルの婚約者となるみたいだ。
「遅くなってごめんね、マリ」
「いいえ。そんな事はないわ、シージル」
「ふざけ……ぷぎゃ」
「良いから寝とけ!」
シージルの出した王族からの正式な文書を見たカゴランダ伯爵は、カージルの「病死」を受け入れた。
まあ、カージルの悪事を知っていても、証拠が無ければ無駄吠えで終わるからな。
そして、本当は両想いだったシージルとマリンピアが結ばれました。
めでたしめでたし、で終わった訳だ。
知らなかった両親やゼラは可哀想だけどな。
翌日
「また、寄った時は顔を出してね」
「ええ。必ず」
「勿論よ」
「またね、リーナにマイ」
「またね、ゼラ」
「また遊ぼうね、ゼラ」
「またな、ゼラ」
「また、ゼラさん」
「待っているからね」
そして、次は伯爵だな。
「迷惑かけた」
「大丈夫だ」
「この都市に来たら、寄って欲しい」
「分かった」
こうして挨拶が終わると、当初の予定を変更して、都市カゴランダを後にした。
「ルカ様、フォレストウルフ!」
「そうだった!」
まだ都市の中だったから、冒険者ギルドに向かった。
……締まらねぇ。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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あのカップリングは意外でした。