俺達の冒険はこれからだ!
学園編は、この話で終了です。
明日の次話からは、冒険編です。
ビアンカ夫人の眉毛が一瞬動いた後、扇子で顔の下半分を隠しながら穏やかな声で言った。
「あら、そこまで話が進んでいるのなら何故、書類を取り交わさないのかしら?」
「それは昨日、話が纏まったからです」
「それなら、貴女のご両親にもご挨拶する必要があるわね」
……ヤバい。
「そこまでだ、ビアンカ夫人」
「あら? どういう事かしら、ルーカス」
「セレス姉さん」
「分かっているわ、ルカ」
「どういう事ですか、セレステア様」
「ビアンカ、話したい事があります」
「分かりましたわ、セレステア様」
「ガル義兄、後は任せた」
「おう! 任せろ」
後は、セレス姉さんとガル義兄に任せて、俺は舞と一緒に学園に行った。
「舞……」
「ごめん、蒼真」
「舞、違うよ。ルカ」
「そうだったわね、ルカ」
「それで、何故、あんな事を言ったんだ?」
「何となく……かな?」
「どちらかと言えば、舞は理論派だから珍しいよな」
「うん、そうだね」
「まあ、良いか。ビアンカ夫人は、セレス姉さんに頭が上がらないから」
「そうなの?」
「ああ」
この後、蒼真としての舞との久し振りの雑談を楽しんだ。
学園に到着して、舞と楽しく雑談しながらクラスに入ると、リナ達以外のクラスの女子全員に睨まれた。
「ルーカス様。ちょっとお時間を頂けるかしら?」
「あ、ああ」
移動するのかと思っていたら、その場で始まった。
「ルーカス様。貴方にはリーナシア様という婚約者が居ながら、何故、マイ様とご一緒に登校されたのかしら?」
……あ、コレ、アレだ。
「今日、一緒に登校したのは、マイが俺の婚約者だからだ。既に義父ガルダイアと義母セレステアからの許可を得ている」
下手に言い訳せずに、結論を言った方が早い。
「それに、リナも承知している」
「本当ですの、リーナシア様」
「本当よ」
因みに、俺は男子から「殺意で人を殺せたら」な、視線を受けていたりする。
つまり、舞の人気は男女問わず高いという訳だ。
舞は、積極的にクラスの女子と会話をして交流を深め、最近では恋愛相談まで受けていたからなぁ。
そんな舞が、俺と一緒に横に並んで楽しそうに、会話しながらの登校だ。
この半年で、俺に貴族的な継承権の無い元平民だとバレた。
それなのに、三女とはいえ、ルナデューク「侯爵」という上位貴族の令嬢と婚約解消されていない。
悪い意味で「お前、何者?」な俺。
そうなると、舞やリナを気に入っている女子側としては「面白く無い」よな。
「マイ様のご両親には、許可を得ていますの?」
「ああ」
「本当ですか、エリカ様に、セイラ様」
「本当だよ~」
「本当ですわ」
「オレには、聞かないのか?」
「それなら我慢しますわ」
岸野は、ナチュラルにスルーされた。
それと、我慢って、どういう意味だ?
俺としては、この世界が「物語」なら、後1つや2つの山場が有ると思っていたが、それらしい山場は学園を卒業するまで無く、舞とリナは学園の生徒からは「双閃華」と呼ばれる様になった。
(俺に)敵対する者を、舞もリナも一瞬の煌めきで鮮やかに倒す様から、この二つ名が付いた。
舞は確かにレベルではリナに大きく遅れを取っているが、対人戦の戦闘技術なら、舞が圧倒的に高い。
まあ、卒業した後は、フロンディーラに行ってリナと同じカリキュラムをやれば、直ぐに追い付くだろう。
次に、岸野と恵梨香が引っ付いた。
純粋におめでとう。
因みに、舞も聖良も2人の事は気付いていたらしい。
その聖良にも相手が出来た。
現騎士団長の次男で名前は「ギルバート=ターム=クリスフォード」で、聖良の純粋で直向きさが好きになったらしい。
聖良も、ギルバートの真っ直ぐで優しい好意にヤられたみたいだ。
最後に、玲奈姉さんだが……
なんと、アーロンと引っ付いた!
まあ、玲奈姉さんも錬金術師だからなぁ。
アーロンに師事を受けながら一緒に居る内に……らしい。
年の差は5歳だから大した事では無いが、アーロンの方が気にしていたから、場合に因っては、14歳差を受け入れていた舞が説得する事で玲奈姉さんを受け入れた。
因みに、独り身がブランカだけになり、本人は焦っているのを隠しているが、仲間内ではバレている。
……ファルゴに、今がチャンスだと教えておこうと思って手紙を送った。
王立学園を卒業後は、全員でフロンディーラに移動して、玲奈姉さんの専門の科学知識を吸収したアーロンが錬金術師としての実力を大きく伸ばし、また玲奈姉さんもアーロンに追い付け追い越せの精神で錬金術に励んでいる。
いつかは「混ぜるな危険」な2人になるかもな。
そんなアーロン達の支援を受けながら、舞達はレベルアップに励んでいる。
「俺達の冒険はこれからだ!」
???side
「遂に旅立つみたいだな」
「はい」
「真名を教えて良かったのか?」
「はい。私自身、あの子を信じておりますし、ルーネからのお願いですから」
「そうか」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。
「……我慢ですか。勿論、ルーカス様の吊し上げですわ」
「……助かった」