理解出来たか?
「普通」や「常識」は、時代が変われば、それらも変わります。
「そうだな。何故だ?」
「え? だって……」
「人を殺す事に何とも思っていない所か、殺す事を楽しむ様な奴らが、俺達が武器を捨てたら人質を逃がすと思うか?」
「そうよ。それに武器を捨てたら、どうやって自分自身を守るの?」
「……」
「理解出来たか?」
「分かったわ」
そう言うと、聖良は捨てた自分の短剣を拾って構えた。
「おい、良いのか? 人質がどうなっても?」
此処で、舞達に見本を見せようかな。
「ああ、構わないぜ。人質を殺せば良い」
「ちょっ……」
「セイラ、黙っていろ」
「……」
「その代わりに、人質という盾が無くなった後の事は覚悟が出来ているのか?」
「どういう事だ!」
「人質が居なくなれば、俺達も遠慮なくお前らを殺せるからな」
「な!?」
「俺達は別に、民を守る騎士じゃないからな。他人の為に自分の命を危険に晒させるつもりは無い。寧ろ、人質が居ない方が後腐れなく殺り易いからな」
「……く」
「ほら、殺せよ。そしたら、その瞬間がお前らの命が無くなる時だ」
「……」
……後、もう一押しだな。
「そうだな。折角だから人質を殺したら、生きたままモンスターの餌にしてやるよ。
抵抗が出来ない様に、手足の筋を切ってな」
「「「「「「「……」」」」」」」
静観している他の盗賊共も、俺のブラフに完全に呑まれて静かにしている。
勿論、煽っているが人質になっている女性を殺させる気は無い。
そんな事をしたら、舞に嫌われるからな。
「ゴチャゴチャ言わずに、このガキを殺して、後ろの女共で楽しめば良いだ……」
「黙れ」
「が……」
横から文句を言って来た誰かを、無詠唱で雷撃弾を放ち、沈黙させた。
「「「「「「親分!」」」」」」
……盗賊共の親分だったの!?
「……降参だ! 命だけは助けてくれ!」
「「「「「降参だ!」」」」」
降参した盗賊共を武装解除させてから、拘束した6人の盗賊共を1人ずつ木に吊るして、拷問してアジトの場所を聞き出してから全員に猿轡をして、盗賊共に「お持ち帰り」された女性3人は、とりあえず生活魔法の1つ「洗浄」を掛けて身体を綺麗にした。
勿論、盗賊共の「戦利品」は、俺が預かっている。
因みに、こういう場合の諸々の権利は学園の学生であっても、学園の権利にはならず、学生に権利となる。
要するに、倒した者に権利が有るという訳だ。
さて……
「マイ達に聞きたい。この盗賊共をどう処理したい?」
「それは……」
「私は、この盗賊共を使って『卒業』したいな~」
「どういう意味なの、恵梨香」
「この世界は、人の命の価値が低くて安いの~。そうよね、ルーカス~」
「ああ。昨日まで楽しく談笑していた相手を、銀貨5枚で殺すなんてザラだ」
「……そんな!」
「だから、少なくとも戦える者は人を殺せなければならない」
「何故です!」
「そうしないと、自分にとっての大切な人が殺されるからだ」
「……」
「確かに私達は、日本という国に所属する日本人よ。でも、今は違うわ」
やっぱり舞も、その辺りの覚悟を決めるのは早いな。
「……舞?」
「私達が居る場所は、自分の命は自分で守らなければならないのよ」
「そうだよ~。だから、大切な人を守る為にも出来ないといけないと、私は思うんだ~」
「でも……」
「分かったわ。今回は聖良は見るだけで良いから」
「舞?」
「でも、目を逸らしたり、目を瞑るのはダメだよ~」
そう言って舞と恵梨香は聖良の肩に手を置いているが、舞の両手どころか全身が震えているし顔色も悪い。
……恵梨香も同様だ。
「舞……恵梨香……」
確かに、ちょっと前まで中2の女子に人を殺させるなんて無理強い過ぎるが、現実は待ってくれないし許してもくれない。
何処かの少年は、仕事か観光かは分からないが、家族と一緒に飛行機に乗っていて、その飛行機が墜落し運良く助かったが、その少年は暫くの間、ゲリラとして生きていた。
それと変わらない。
環境が変われば出来る事も変わり、出来ない事を無理にでも出来る様にならないといけない場合もある。
「……分かったわ。私もやるわ」
「無理しなくても……」
「舞。そんなに身体が震えていたら説得力は無いわよ」
「あははは……」
「恵梨香もよ」
「……」
「大丈夫よ。私達には、信頼出来る人が居るのだから……ね、ルーカス」
「当然だ!」
「ふふ。期待しているわ」
「因みに、盗賊1人処理すると、無関係な人達30人を救うと言われている」
「「「……」」」
「此処に7人居る。つまり、此処で処理すれば、少なくとも210人の無関係な人達が殺されずに済む事になる。
もしかしたら、その210人の中に、マイ達の大切な『誰』かが入っているかもしれないな」
そう言った瞬間、舞の身体の震えは止まり、顔色は良くなり、覚悟を決めた凛とした表情をしていた。
「私も、その210人の中に……」
恵梨香も覚悟が決まったのか、身体の震えは止まり、引き締まった顔になっている。
「私も……やるわ!」
聖良も、何かを決心したみたいで、舞達同様に身体の震えは止まり顔色も良くなり、生徒会長をしていた時の表情になっていた。
「昔、勇者召喚された者が残した言葉がある」
「それは何?」
「文献には、こう書かれていた。『剣は凶器。剣術は殺人術。それを否定する者は、己の手を血に染めた事が無い者が言う甘い戯言。
そして、日本人はそれを忘れてはならない』……と」
過去の勇者召喚された者の中に「あの作品」のファンが居たみたいだな。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点とブックマークをお願いします。
「そういう事は、経験してから言うんだな!」
……ってやつですね。