何が有った?
空気だった主人公が、やっと出番です。
「もう一度、聞くわ。恥ずかしく無いの?」
「舞……」
「同郷の者として、私は恥ずかしいわ。
裕哉が完全に悪いのに、あんな汚い言葉を言ってくるなんて」
「いや……あの……」
「裕哉のさっきまでの言動を聞いた今、女神様の聖域での裕哉の言葉に信憑性は無いかもしれないわね」
「あの時の言った事は本当だ、舞!」
「……今は、信じてあげるわ」
私は、王国側と学園側の関係者に対して頭を下げた後、きちんと顔を上げて言った。
「同郷の者の無礼侮辱を、同じ同郷の者として謝罪します。申し訳ありません」
「いや、貴女が謝罪する必要はない」
「そうですな。謝罪すべき人物は他にいますからね」
私は意図を察して裕哉を睨んだわ。
「……す、済まなかった」
一応は、本人が謝罪した事で収まったけど、私の中で、裕哉は無条件で信頼する幼馴染では無くなったわ。
もしも、あの時の「事故」が事故でないのなら、私は裕哉を一生赦す事は無いわ!
編入初日は、クラスの皆とは挨拶と軽い交流で終わり、その日の夜、私と恵梨香と聖良に玲奈姉さんが集まって相談したわ。
「私は、もう裕哉を無条件で信頼する事が出来ないわ」
「私は、少しだけど知っていたけどね~」
「恵梨香、本当なの!?」
「うん。あれだけ、日が経つにつれて、蒼真への態度が変われば、ね~」
「……確かにそうね」
「聖良まで!」
「ええ。ただ、卑怯だけど私は立場上、舞達には言えなかったわ」
「……分かっているわ」
「ありがとう、舞」
「それで、舞達はどうするの?」
玲奈姉さんが「先生」として聞いてきたわ。
「あれだけきちんと説明を受けていながら、あれだけ簡単な問題を、2ランク下がる程に間違うなんて有り得ないわ!
……まあ、岸野君の場合は仕方ないとしても、裕哉は別よ」
「そうよね~。アレは完全に天狗になっていたわよね~」
「だから、距離を置こうと思う。
今となっては、あの『神域』での事故も、本当に『事故』なのか、怪しいわ」
「聖良はどうする~?」
「私は、お父様の為に頑張っていました。
そして、辛く悲しいのですが、そのお父様との『繋がり』が切れてしまいましたので、暫くの間は、心の整理をしたいと思います」
「分かったわ」
「ただ、もう裕哉さん……いえ、右京さんに尽くす事は無いでしょう」
「分かったわ」
こうして、私達の相談会……いえ、決別会は終了したわ。
因みに、岸野君は保留となったわ。
彼自身が、両親と自分に誇りを持っていれば自然と答えが出るでしょうから……
翌日、私達は王立学園に通う為に移動するのだけど、聖良の半分仕事と化した「裕哉さん、起きて!」が無くなった為に、裕哉だけ遅刻が確定しているわ。
私達が教室に入り、クラスの皆と会話をしていると、着ている制服が乱れ肩で息をする裕哉が現れた。
管理人が起こしたのかな?
「聖良! 何故、起こしに来なかった!」
「何故、私が右京さんを起こさないといけないのです?」
「起こしに来るのは当たり前だろうが!」
「だから、何故です?」
「な!?」
「此処は、日本ではありません。私はお父様の為に右京さんを起こしに来ていただけです。
でなければ、私から右京さんの家まで徒歩で1時間掛かる距離を毎日、起こしに行きません」
此処で、担任の先生が教室に入って来た事で裕哉は私達を睨みながら退場したわ。
「何が有った?」
「今までの生活が出来ない事への自覚が足りていなかった事を指摘しただけです」
「そうか。ではホームルームを開始する」
ルカside
聖良の献身は裕哉の為ではなく、父親の為の献身だったのか。
……裕哉のざまぁ!
「さて、昨日はクラス内の親睦を優先したが、今後のマイ達の世話係をルーカスとリーナシアが担当するように」
「分かりました」
「分かりましたわ」
「待ってください! 何故、テンジョウイン嬢達の世話係を勝手に決めるのですか!」
「決めたのは、国王陛下だが?」
「な!?」
「昨日は言わなかったが、このクラスのマイ達とCランクのクラスに編入したユーヤとヒジリは、とある理由から他国から預かった留学生だ。そして、準教師ホクシンは、彼女達の保護者代行である。
因って、世話係等の担当は国王陛下がお決めになった」
「……分かりました」
あいつ、昨日の段階から積極的に舞達の前に出ていたからなぁ。
何かを狙っていたんだろう。
因みに、舞達が編入したのは2年生のクラスだ。
……まあ、裕哉達もだけどな。
それと実力主義制の関係で、クラスの定員は決まっていない。
その為に年ごとにクラスの人数が変わり、俺とリナは今期からBランクからAランクに変更となった、という事になっている。
流石に、前期と後期の試験の度に入れ替えの可能性が有る為に、他クラスの名前を全て覚えている者は居ない。
今年は、Aランクのクラスが舞達や俺とリナを加えて16人で、Bランクのクラスは23人で、Cランクのクラスは20人で、Dランクのクラスは8人だ。
そして、前期と後期の試験次第ではクラスの入れ替えの可能性がある。
後、王立学園の規則は学園が決めたのではなく、当時の国王が決めた事だから、規則に逆らう事は、当代の国王、つまり現在の王族に背く事となるから気を付けないといけない。
だから……
「貴様! テンジョウイン嬢達の世話係を、財務省に勤め伯爵位の父を持つ嫡男のボクと変われ!」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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