……これだけよ
冷酷な女社長。
しかし、その実態は!(笑)
娘2人に「お母さん愛している」という意味で、リリーディアさんは娘2人に散々イジられた後、朝食が始まり、終わると全員で家族用の応接室に移動した。
「さて、今後の事を話すよ」
「……はい」
「邪神の封印についてだ」
この一言で、場の空気が一瞬で冷たくなり厳かになった。
「一応、確認の意味で説明するわ。
いいわね? 邪神とは……」
邪神とは、この世界の創世の神話に僅かしか出てこない。
元々は闇を象徴する神だったが、いつしか邪神となり、太陽神に因って封印された。
そして、この世界に「夜」が生まれた。
「……これだけよ」
そう、本当にこれだけだ。
仮にも、この世界の「創世の神話」なんだから、もっと書かれても良い筈なのに。
「そして、何時からか、私達の一族が、この邪神の封印を代々続けてきたわ」
「でも……」
「そう。その封印が揺らいでいる」
「だから、再封印しかない訳か」
「そういう事だね」
「それで、俺が喚ばれた理由は?」
「既に、試したからだよ」
「……ダメだったからか」
「……そうよ」
「「……」」
どうやら、リリーディアさん達は再封印を試みたが、失敗に終わった訳か。
「男の俺がしても良いのか?」
「分からないわ」
「……そうか」
「でも、再封印は絶対に成し遂げないと……」
リリーディアさんが、話している最中に突然地震が発生した。
「え!?」
「だ、大地が揺れている!?」
「「「……ひぃ!?」」」
「……地震か」
「そうね、ルカ」
「ど、どうして、へ、へ平気なの?」
「そりゃあ、なあ、マイ」
「そうよねえ、ルカ」
……地震大国だったからなぁ。
勿論、この世界には実在する神々が存在している以上は、この地震は神々の誰かが起こしている可能性も有る訳だ。
2、3分間揺れていたが収まって、念の為に30分程警戒していたけど、地震が無かったから緊張を緩めた瞬間に、遠くから乱雑な足音が聞こえて来た。
そして……
「フローディア様、大変です!」
「どうしたんだい?」
「報告します! 奥の院『封印の間』に置かれている『封水晶』が割れていました!」
「なんだって!?」
「それは本当なの?」
「……はい」
「予備の封水晶は?」
「既に、儀式の準備は出来ています」
「分かったわ。行くわ!」
「俺達も行こう」
「……お願いするわ」
俺達もリリーディアさん達に同行して、その「奥の院」に向かった。
「……此処が『奥の院』か」
「そうだよ」
「準備は良いわね? 儀式を始めるわ!」
リリーディアさんは、入って直ぐ横の部屋に入り、5分程で巫女的な衣装に着替えて部屋から出てきた。
そして儀式は始まったが、まるで「神道の祭事」みたいな感じだ。
「まるで神道の祭事ね」
「マイもそう思ったか?」
「ルカも?」
「ああ」
あれから2時間を超えているが、あまり思わしくないみたいだ。
リリーディアさんから、大量の汗が流れ続けている。
儀式を見続けた事で分かったが、儀式用に変換させた魔力を、祭壇の中央に置かれている「水晶球」に流し続けていた。
おそらく、あの水晶球に魔力を満たす必要が有るのだろう。
遂に……
「……ふう」
「終わったかい?」
「はい、お母様」
「頑張ったね」
「……はい、お母様!」
「……」
これで終わったのか?
もしかしたら……
「ルカ?」
「舞、完全武装して警戒を怠るな」
「わ、分かったよ」
「リナ達もだ」
「分かったわ」
「はい、ルカ様」
「分かったのじゃ!」
俺は「倉庫」から、舞達はそれぞれのマジックポーチから武具を装備し、何時でも戦闘が出来る状態にした。
「……くくく。少しは鼻が利く者が居るな」
「誰だ?」
この奥の院で唯一影が出来ている場所から、突然気配が溢れ、何者かが現れた。
「私か? 私の名は『シュザル』……
イヴィルガーディアンの『シュザル』だ!」
「イヴィルガーディアン?」
「至高き方に絶対の忠誠を誓う下僕……それが我等イヴィルガーディアンだ!」
今の言葉で、少なくとも、崇拝までさせるカリスマ性を持った黒幕と、コイツと似た様な立場が2人以上が存在するな。
「封水晶への魔力注入は見事であったが、消耗した今なら、私に抗えるかな?」
「……くっ」
「それは出来ないかもしれない」
「そうだよ。此処には私達がいるんだから」
「そうね。紹介状の無い方には退室して貰いましょうか」
「ルカ様に敵対するのなら容赦しません」
「なのじゃ!」
「……良いだろう。先にお前達から片付ける事にしよう」
「……来るぞ!」
「……死ね」
……ヤバい!
「速……」
「……く」
「良かったな。この男が防がなければ、首が身体から離れていたぞ」
「こいつは俺が相手をする。舞達はフー祖母ちゃん達を」
「わ、分かったよ」
舞達は、フー祖母ちゃん達に方に行かせたが、コイツ……言うだけはある!
「俺が相手だ!」
「多少は動けるようだが、私の敵ではない」
「行くぞ!」
「来い!」
……つ、強い!
俺が「素」のままとはいえ、マジで本気を出しているんだぞ!?
「貴様、何者だ?」
「普通の冒険者だ」
「戯言を……」
確かに強いし、俺も本気を出しているが、このまま押し切れそうだ。
「く……」
……怪しい。
先程から、僅かに出来る余裕の時に、周りを確認しているが、何を狙っている?
「隙を見せたな!」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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