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69話 『解読』 (2010年6月6日 753回目)

「あー、駄目だ。勝てる気がしない」


 ずっと操作していたマウスを放りだし、椅子の背もたれに寄りかかる。


『そんなデータの調整にどれ程の意味があると言うのか』


 独り言に対して胸元からアルの返事がある。

 スライムの参戦と強化により多少戦闘に余裕が生まれたので、今回からアルは再び僕の相談役に収まっている。もっとも、どちらかと言えば相談役より守護者と呼ぶ方が適切なのかもしれないが。

 その理由は僕が大きく弱体化しているためだ。スライムに与える魔石が枯渇した際、僕が選んだのは魔石の代わりに『修正パッチ』を与えることだった。

 アルは以前、魔石のエネルギーは『修正パッチ』と同じ方向の力だと言っていた。それならば逆に『修正パッチ』もバグとは異なる力ということだ。

 『次元スライム』も『修正パッチ』を捕食して強化されていたし、『修正パッチ』の力がバグではないのであれば『暴食スライム』が捕食しても強化は可能だである。


「僕が一般人に戻る前の方がまだ可能性はあるだろうからね」


 結論として、僕が取り込んだ『修正パッチ』は『解除』を使用することで取り出すことが可能だった。ただし、取り込んだ時と同じ様に1周で1つずつであり、その対象は完全にランダムになっている。

 一応まだ『反射』や『増殖』、『分離』といった大型の『修正パッチ』はランダムの抽選対象になっていないが、身体能力の向上系は半分以上スライムに移し終えており戦闘は厳しいだろう。

 器用さや集中力といった能力も軒並み低下しているので、僕がやろうとしていることの成功率は周回を重ねるごとに低くなっていく。


『なら、先程の突撃槍とサイスの組み合わせではどうだ? 攻撃が繋がるようではないか』


「その後のパルスレーザーまで繋がるね。ただ、硬直が長いんだ。ほらこんな感じ」


 僕が再びマウスを操作すると、デフォルメされた機械仕掛けのキャラクターが無抵抗な木偶人形に連続攻撃を始める。表示されている総合ダメージ量は結構な数字となっているが、攻撃後には痺れたような描写で止まっている描写が映る。

 これは、公式に提供されているギルガンのキャラクター作成ツールだ。ギルガンの調整箇所は見た目の変化は元より、武器の選択やポイントの割り振り等で自由度が多い。そのため、ツールには細かい検証用の機能が搭載されており、今動かしたような簡易的なテストモードも搭載されている。

 ここで作成したキャラクターを専用カードのIDに紐付けることで、ネットワーク経由でゲームセンターで使用できるようになる仕様だ。


『ふむ。勝敗に影響する隙には見えぬがな。それ程強いのか? そやつは』


「あぁ、異常だね。機体は割りと普通なんだけどね。ちょっと待って、似たような機体を探してみるから」


 当然探すのは長谷川さんの操る『ういんた』と同様な武器構成をしているキャラクターだ。この作成ツールでは、自分が構築したキャラクターは自分で使用するだけではなく、フレンドに提供したり全体に公開することもできるようになっている。

 その公開情報の中から検索機能を使用して武器やおおよそのステータスで絞っていくと、最終的には10体程の機体になった。


「この中で一番近そうなのは……ん? え、まさか……そんなことあるか?」


『む? どうした。もしや全く同じ機体でもあったか?』


 公開されている機体は、機体の名前を付けて公開することは可能だ。

 長谷川さんの性格的には公開していてもおかしくはないが、過去に何度も検索した際に引っ掛かったことがないし、そもそも実際に『ういんた』の名前があったわけではない。

 衝撃を受けたのは、表示されている機体の情報やパラメータではなくもっと本質的なところだ。表示された情報の中で、本来誰も気にしないが表示が必要な項目――公開データのコードそれ自体に見覚えがある。

 そのコードは人間の判別用ではなく機械用のコードであり、見た目には数字やアルファベットもしくは記号の羅列に過ぎない。判別は出来ないがそのままコピーすれば同じ機体が生成されるし、最初の機体名のデータ部分以外は1文字でも変えてしまえばエラーとなる。

 中には解析してチートキャラクターを作成しようと試みた人もいたらしいが、今のところそれを突破した話を聞いたことはない。

 恐らく、データをカードに直接に登録せずサーバーにアップロードするシステムであるため、サーバー側のチェックで弾かれるのだろう。


「勘違いかもしれないから、とりあえず試してみるよ」


 そう言ってマウスを操作し、本来貼り付けでしか使用しない入力欄へキーボードで文字列を叩き込んでいく。


『――ふむ。あの暗合か。確かに似ておるな』


 僕が『GG』から打ち始めた文字列は、ダンジョンの入口から見えたホワイトボードに記載されていた暗合だ。能力が低下しているとはいえ、記憶力の向上系のスキルはまだ残っているので、調べることなく入力することができている。

 なんでそんなところに、高々ゲームの機体データなんかが記載されているのかは甚だ疑問ではあるが、確かに酷似している。GG――ギルガンの頭文字から始まり、容易に解析可能な機体名の部分、そして解析が難しい本データの部分、全体の文字数とその思い付きを否定する部分は全くない。

 長い文字列を打ち終わり、改めて確認してみるが打ち間違いもなく入力できている。そのため、恐る恐る読み込みボタンにカーソルを進めてクリックする。


「――通った! えっと、読み込まれた機体は……」


 そこに表示された機体の情報を確認すると、余りにも常識外れな機体構成が表示されていた。

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