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47話 『日常』 (2010年6月7日 555回目)

 槍を構えた『ういんた』が迫ってくる。

 既に黒田の『BB』はやられてしまい、僕が使用している『オルトロス(・・・・・)』が辛うじて耐えている状況だ。

 『オルトロス』は2首の犬の魔物の名前だ。『ケルベロス』から別の機体に代えたのは、武器を3つから2つに絞ったためだ。

 武器変更の理由は単純で、エネルギーフィールドより多段エネルギー弾の方がダメージ効率が良いためだ。

 多段エネルギー弾の出力方向はランダムで、エイムを必要としない初心者武器とされているが実際は少し違う。発射する時間帯によって出力方向が決定する。その中で必中となるパターンがあるのでそれを利用している。

 そのタイミングの入力可能時間は数フレームしかないが、今の僕であれば狙って撃つことが可能だ。ただし、そのタイミング期間も約5秒置きにしか発生しないので、撃破までには長時間の戦闘が必要になる。

 だが、第二形態になった『ういんた』はその時間稼ぎを許してくれない。『ういんた』の怒涛の槍攻撃は、避けかたや防御の仕方が山程あるはずなのだが、何故か連撃が最終的に回避不能攻撃に繋がってしまう。

 長谷川さんは全てのパターンを網羅しているのか、臨機応変に対応しているのか不明だが、どんなパターンでも1度もミスすることはない。 

 尚、多段エネルギー弾のランダム性に期待して撃った場合は、当然の如く全て回避されてしまう。

 そして今回も時間稼ぎしきることができず撃破されてしまった。


「惜しいな。だが、ついにやったな! ここまで追い込んだのは初めてだぞ」


 黒田にとっては長谷川さんから初めて第一ラウンドを取ったので喜んでいるが、僕にとっては納得できない事象だ。

 何周もパターンを学習し、都度対策を打っているにも関わらず未だ勝利できずにいる。なんとか第二段階まで追い詰めることは出来るものの、結局はそこまでだ。

 長谷川さんの強さは、単純にゲームセンスの違いといった段階を超えた異常さを持っている。なにせ、僕が習得しているパッシブスキルも、ギルガンの操作にがっつり機能しているためだ。

 腕力等の身体能力は大して意味を成さないが、動体視力、器用さの強化といった技術面、記憶や思考の強化といった戦略面は機能している。

 個人能力なので問題はないはずだが、対外的にはチート級の不正を疑われても仕方がないレベルだ。が、それを持ってしても勝つことが出来ない。

 その結果より、なんとなく長谷川さんが超越しているカラクリが見えてきた気はするが、その予想通りならば不正はないので、なんとか頑張って攻略してみたいところだ。

 なにせ、こんな張り合いが無ければ日常が全く楽しくなくなってしまう。


 あの大きなスライム。結局あいつは全く危険ではなかった。身体が大きく戦闘力も大きいが、それが脅威になるのはこちらから手を出した場合に限る。しかも、僕程度の攻撃では恐らく攻撃された範疇に入らず、反撃の対象にもなっていないのではと推測している。

 結局あのスライムが興味があるのは食と遊びだけであり、人間を襲おうともしない。バグり(・・・)さえしなければ完全に問題が生じない。そのバグも、忘れずにバグトレントを処理しておけばバグることは無いように思われる。

 この繰り返しから抜け出す、もしくは抜け出すためのヒントを得るためには討伐する必要があるように思われるが、無害だと判明した相手を討伐対象にするには気が乗らないし、そもそも勝てる見込みもない。

 目下、討伐する目標が無くなってしまったので日常を繰り返す日々になっている。そして、現在の日常はおおよそ固定化されてしまっている。


 1日目――6月5日はまずはバグトレントを討伐し、夜に天文部の合宿に参加し、天体観測と魔物の研究を行う。珠に『修正パッチ』が手に入るのが1つのイベントのようなものだ。


 2日目――6月6日は前日に研究した結果をデババトに反映させて梓と対戦してみたり、柚葉さんのご飯を食べたりして過ごす。梓と柚葉さんは僕の様子を観察して行動を変えるようなので、毎回少しずつ違いがあって救われている。

 また、この日にスライムの研究も行っている。しかし、反応はあるものの言葉が通じているのかも不明であり、コミュニケーションが取れるのかも未だ確定していない。もはや遊び相手や食事を提供してくれる相手としか見られていないように感じる。

 その他の事象として、公園に魔物が大量に発生するが、それは協会に任せておけば被害もなく解決してくれるので放置している。また、この時間の後にスライムがどこかへ失踪するのも相変わらずだ。


 3日目――6月7日は学校に登校することにしている。人が多いので変化があった場合に違和感に気付きやすいためではあるが、違いは今のところ発生していない。

 授業中は体育であまり目立たないように注意し、放課後に長谷川さんに挑戦する流れだ。

 それ以外は、それとなくスーパーマーケットへ黒田達を誘導して終わる。《フォレストゴーレム》についても、黒田に任せておけば無難に討伐してくれる。スライムがバグって現れることもないので、今では僕が確認に行くこともない。


 長谷川さんに挑戦した後、ないしは4日目の6月8日の10時までに何をしているか、それは街中の捜索である。

 根拠もなくしらみ潰しに回っているが、これが唯一繰り返しから脱出するための行動だ。

 捜しているのは繰り返し前の1回目、そこでバグスライムを圧倒したあの人物だ。これだけ繰り返しても遭遇していないので繰り返しの世界には存在していないのかもしれないが、何かしらの事情は知っていそうな様子だった。スライムを討伐する方法が手詰まりになっているので、残す方法はこれしかない。

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