表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/87

45話 『一撃』

 全力で斧を振り下ろす。この全力攻撃をもし外から見る人が居たのであれば、一瞬のことで目にも止まらないだろう。


 僕が元々持っていた『修正パッチ』や追加で入手した『修正パッチ』で一番多いのが、能力を上げるパッシブ系だ。

 その内訳は、『腕力向上』や『動体視力向上』のような『向上』系、そして『腕力強化』や『脚力強化』のような『強化』系の2種類が大部分だ。

 習得することでなんとなく認識出来たが、前者がステータスを固定で増加させる加算タイプ、後者がステータスを比率で増加させる乗算タイプとなっている。

 このパッシブ系に加えて、守備力を犠牲にして攻撃力を上げる『攻撃特化』、一時的に力が上がるが後でぶり返しが起こる『一撃特化』、エネルギーを多く使うが移動速度がはね上がる『俊足』等、今の一撃に有用そうなアクティブ系も軒並み使用している。

 スキルを多重に効果を発揮させた結果、フィジカル面では既に黒田すら上回っているものと認識している。


『きゅ!?』


 完全に不意を付いているにも関わらず、気配を察したのか『暴食スライム』が振り返る。本来ならこのタイミングで気付いてもとても対処できないタイミングだ。

 だが、それでも反応してくるのは既に知っている。既に攻撃モーションに入っている斧の振り下ろしに対し、それを上回るスピードで触手が収縮する。次の瞬間にそれが急激に伸び、僕を弾き飛ばそうとするはずだ。

 その攻撃の威力は、黒田が急遽攻撃を捨てて防御に移行したにも関わらず『増殖』の効果を消し飛ばされた惨状を思い起こせば、防御不能であることは容易に想像できる。

 防御出来ないならば避けるしかないわけだが、既にそういう体勢ではない。伸び始めた触手がスローモーションのように見え、僕の胸辺りにもう少しで直撃する――が、これを待っていた。


「――『反射』!!」


 もの凄い速度で射出された触手は、僕の胸元からその方向を逆に変え『暴食スライム』自身に直撃している。

 だが、それだけでは終わらない。追い討ちとばかりに攻撃の最終段階に入っている斧を完全に振り抜く。その攻撃は迎撃されることもなく、避けられることもなく、『暴食スライム』の本体へと直撃した。


「――――――――っ!」


 カンッ、カン、カンカラカラカラーン


 一瞬の静寂の後、僕の後方で何か金属が転がる音がする。いや、何かではなくその物質が何であるかは既に理解している。あまりの衝撃に思考が追い付いていないだけだ。

 今後方に落下した金属――それは、斧の刃先だ。振り抜いた斧、その先端の繋ぎ目が完全に砕け木屑が辺りへ散らばっている。

 斧が折れたのは極めて単純な理由だ。『暴食スライム』が異常な程硬かった(・・・・)。そして、その硬い理由も『暴食スライム』の様子を見れば明らかだ。柔らかそうだったその表面は、今や水晶のような光沢を見せている。

 その光沢は過去に見たことがある。バグった『暴食スライム』の足止めとして『泥沼』と一緒に機能した『修正パッチ』――『硬質』だ。

 この『修正パッチ』は協会の総力戦の時に喰われていた。喰ったスキルを使用出来るのは、スライムであるならば当然だともいえる。


『きゅい?』


 質感が元に戻り、完全に無傷の『暴食スライム』が僕の方を不思議そうに見ている。その様子から判断すると、意識的に攻撃や防御をしていたようには見えないので、もしかすると、自動迎撃や自動防御のようなスキルを持っていたのかもしれない。

 『反射』で跳ね返した攻撃のダメージもないところを見ると、自動防御の方が優秀なのか、あるいは自動迎撃は受けそうなダメージに比例して威力が変わるのかどちらかだろう。黒田が吹き飛ばされた時の威力から考えると、なんとなく後者な気がする。

 惜しむらくは、今の一撃を黒田が繰り出した程の威力にするには必要な駒が足りなかったことだろう。例えば武器。黒田が使っていたような特殊な大剣でもあれば『硬質』に負けずに振り抜けたかもしれない。もしくは技。ただ振り下ろすだけではなく、黒田の『暗黒剣術』のような威力を底上げする技があれば結果は違ったのかもしれない。


「いや、参ったよ。僕の完敗だね」


 代償のあるスキルも使用して一撃に込めたため、その反動が肉体に返ってきている。完全な状態ならばここから逃げることが出来た可能性も残っていたかもしれないが、怠さや痺れ、空腹感や眩暈まで襲ってきており、今はとても動けそうにない。


『きゅい!』


 言葉が通じたのかは不明だが、『暴食スライム』の触手の形状が斧の形に変わっていく。やられた通りにやり返すという意思表示だろうか。

 残念なことに、この後に助かる展開、例えば黒田辺りが救ってくれるような展開も起こりないのは、何度も繰り返してきた僕だからこそ断言できる。

 願わくば、このまま未帰還者にはならず次の周回に戻ることを期待するが、思考実験ではその可能性は低く、もし起きればあまりにも都合が良すぎるだろう。

 そんなことを最後に考えていると、無情にも触手で出来た斧は僕の頭へと振り下ろされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ