第93話 愚者と道化1
え〜、ただいま旅行中で〜す!!(≧∀≦)
充電器…くそ、何故家に…(´・ω・`)
アリシアが今を見れなくなったのは、全て私の責任だ。あの時、私が油断しなければ、そもそも、あの森にいかなければ…彼女は少なからず、私なんかの為に死ぬこともなかったのかもしれない…
…アリシアと出会ったのは、私が勇者として各地を周っていた頃だった。
それは、街で買った地図が正確ではなかったことで、森に入って迷っていた所、森で樹の実を集めていたアリシアを見つけた。
「そこのお嬢さん、この辺りに村があるなら休ませてほしいのだが…」
「えっと…」
「あぁ、すまない、私はヴェスタ…少し旅をしている者だ」
「はい、勇者様ですよね?」
「そうだ…なんだって?」
まだ勇者とは名乗っていない筈なのに、彼女は私の存在を看破して見せた。その時の、驚いた私の顔はさぞ滑稽だっただろう。
「何故、分かった…?」
「まぁ、私は少々特別ですから…それと、村ではないですが私の家が近くにありますので、そこへ案内しますね?」
「あ、あぁ…」
私は疑問に思ったが、とりあえず彼女の後をついていくことにした。そうしてしばらく歩くと、森の中に開けた空間があり、そこに民家がポツンと建っていた。
「さぁ、中に入ってください」
「分かった」
中は清潔に保たれており、長い間の生活感が感じられる。
「それで、何故この森にいらしたのですか?」
「…少し、迷ってしまっただけだ」
「…本当ですか?」
「あぁ、そうだが…?」
「ふふっ」
「なっ…なぜ笑う!?」
「いえいえ、勇者様でも…その、迷子になるのだなと…ふふっ」
私はアリシアと早々に打ち解けることができ、しばらくの間はアリシアの家で身体を休めることになった。
………
……
…
それは、自我が非常に薄かった。
何も見えない冷たい暗闇の中に存在していた。
自分が何で、何故存在しているのか、それを永遠と自問自答していたが、答えは見つからなかった。
そんな日々を送っていたある日、それに様々な感情が注ぎ込まれた。
憎悪、憤怒、恐怖、狂気、殺意などが、まるで激流のように流れ込んで来る。
『アイツが憎い』
『なんでこんな惨めに生きないといけないんだ』
『嫌だ、まだ死にたくない』
『そうだ、私が…っ』
『絶対に、許すものかッ』
その感情の波に身を浸している中、それは考えていた。
一体、これは何なのだろう?
何故、私に流れてくるのか?
…そして、それは答えを得た。
『一体、これは何なのだろう?』
これは、私への願いなのだと
『何故、私に流れてくるのか?』
それは、私がこうあるべきだと望まれているからなのだと
…ならば、その願いを叶えてみせよう、望まれているなら、そうであり続けよう。たとえそれが、どんな結果をもたらそうと…きっと、私の存在はその時にこそ証明されるのだ。
その思考に達した時、それは今の感情を噛みしめるようにして…ただ、『カッ』と高くも鈍い音を鳴らした。




