第86話 氷条 美紗の悪夢
どうも、サイエンスファンタジー武器を手に入れたミーシャです!!
今私は…あれ?ここどこ?
辺りを見渡しても一面白い霧に覆われていて何も見えません。
「えっと…私はーーー」
『美紗、お前は真面目に生きるんだ』
………ああ、嫌な声が聴こえる………
「ーーー美紗、お前は真面目に生きるんだ」
…それが、私の祖父の口癖だった。
私の両親はデザイナーの仕事をしていて、よく勉強のために海外へ行っている事を祖父は気に入らなかったようだ。
両親が飛行機事故で亡くなった時の、祖父の第一声が「大馬鹿者が」だった。
その日から、祖父の畳の敷かれた部屋で何度も言われてきた、「お前だけは真面目に」「お前だけは幸せに」という言葉…私はそれが嫌いだった。
まるで、両親が不真面目で不幸であったかのような言い方で、どうしても納得出来なかった。夢を追う二人の背中はかっこよくて幼いながらも憧れていたのだ。
しかし、祖父に逆らう事など出来るはずもなく、私は淡々と人生を過ごすようになった。
メリットの高い方へ、効率よく、冷静に。
遊ばず、剣道を、茶道を、柔道を、塾へ、不要なものを買わず、お洒落もせず、高校でいい成績を残し、良い大学に入って、竹刀を降って、お茶を立て、組手を、机へ、シャーペンを、問題を、真面目に、真面目に、真面目に…絶対に、間違えないように…
…暗い部屋の中、一人の女性がいました。
自分のこれまでの人生が途切れ途切れに流れるテレビの明かりで照らされた、黒く綺麗な長い髪をした女性が膝を抱えています。その背中は、大人の筈なのにとても小さく見えて…
「きらい、きらい…全部、いらない…っ」
その言葉への正しい答えを…私は、知っている。
「違うよね?」
違う、それだけじゃない。
まだ大切なものが足りない。
「貴女…いや、私はただ…」
私は、その言葉を…
「…ただ、嬉しかったんだよね?」
女性は顔を上げて、こちらを見上げる。
「ち、ちが…」
「祖父だけが、私を必要としてくれた…私を、孫娘として、家族としてちゃんと見てくれたから…」
…私の両親は、私を見ていなかった。デザイナーの仕事を最優先にし、私のことなど二の次三の次。会話どころか、話しかけただけで平手打ちをされる事もあった。
それを知った祖父は、私が知る中で今までにないほど怒っていた。
『お前…ッ自分が何をしたか解っているのかッ!?』
『五月蝿いわね、コイツが…』
『コイツ、だと…?自分の娘に対してコイツとはどういうことだッ!!』
『私は夫とデザインの仕事が大事なのッ!!子供なんていらなかったのよッ!!なのにコイツは産まれやがって…ッ』
『…っ』
私はまた殴られると思って、目を必死に瞑った。パンッと叩く音が聴こえたけど、痛みがいつまで経ってもこなかったから、私は恐る恐る目を開けた。
『…?』
『…何すんのよ』
『…お前が子供に手を上げるなら、私がお前に手を上げても問題無いな?』
『…ッ!!何を訳分からない事を…ッ!!』
『なんだ、孫は文句の一つも言っていないぞ?大方、お前が文句を言わなくなるまで叩いてきたんだろうさ』
『ちょっと、ソイツを連れてどこに行くのよッ!!』
『…この子は私が育てる、お前なんかに任せられるか』
『ソイツは私の子供よッ!?』
『お前に…ッ!!子供をこんなに痛めつける奴に、親を名乗る資格などあるわけ無いだろうがッ!!』
そう言い放った祖父は、傷だらけの私を優しく抱えて部屋を出ようとする。
『ちょっ…』
『二度と顔を見せるな、この面汚しめ』
…
……
………
「…」
「ほら、私をちゃんと見てくれてたのはあの人だけでしょ?」
女性は顔に影を落として、まだ膝を抱えたまま…私は、そっと手を差し伸べる。
「いや、少しやり過ぎな感じはしたけど…でも、嬉しかった…私は生きてていいんだって、必要とされてるんだって分かったから…貴女もそうでしょ?」
「………卑怯だよ…そんなこと言われたら、もうここに居られないよ…っ」
しっかりと手を握った女性は、立ち上がると同時に抱きしめてきました。
「…もう、大丈夫?」
「うんっ…!!大丈夫だから…私も、頑張ってね!!」
そして女性は、涙を流しながらも嬉しそうな笑顔を浮かべてーーー…
お………き…っ…
…い!!早く…ッ!!
「とっとと起きろやゴラァッ!!!」
「ふへぁッ!?」
びっくりしたっ、いきなりお腹のそこに響くような怒号が聞こえて、私は飛び起きました。
「ええと…?」
周りを見渡すと、先程とは打って変わって家々が崩壊し、あちこちで火災が起きています。
「ん〜…」
…どういう状況?
悪夢は少し続きます…




