第80話 忌み双子
今回はルジェの過去編です…
まぁ、ルジェちゃんに何があったのかある程度は予想出来ると思いますが…もしかしたら次話くらいに胸糞?になるかもしれないので、ちょっと注意です。
一応、今回の過去編は2〜3話で終わりますので…
…これは、とある血で穢れた化け物が生まれるまでのお話…
………
……
…
昔々、ある辺境に仲睦まじい夫婦が居た。その夫婦は先代辺境伯からそこの領地の自治を任命され、日々多忙ながらも幸せに暮らしていた。
…そんなある日、その夫婦の間に双子が産まれてしまった。
その領地は未だに精霊信仰が強く残っており、双子は不吉なものとされていた。そして信仰上、双子の片割れを処分しなければならないのだ。そうしなければ、厄災が襲いかかるとされている。
「そんなの、駄目よ…」
「…そうだな、殺すなんて出来るわけがない…」
…しかし、その夫婦にはそんな残酷な事など出来る筈がなかった。だが、ここから出て生きていけるなどと思い上がっていない。ならどうするのか…
「とりあえず、この娘の存在を隠して育てよう」
「えぇ…」
〜数十年後…
「お姉様〜♪」
窓から日差しが差し込む廊下で、綺麗な白髪の少女が少し背の高いメイド服を着た少女に抱き着く。抱き着かれた黒髪のショートボブの女性は柔らかい笑顔を浮かべる。
そう、この二人が不吉なものとされている双子であった。現在は黒髪のクトをメイドとして、白髪のルジェを娘としている。勿論そのことを二人は知っている。
「お嬢様、ここでは…」
「大丈夫だよ〜♪」
クトは心配そうに周りを見るが、他の女中は優しく見守るだけであった。それは、常日頃から「姉が欲しい」と聞こえるように呟いていたのと、二人の髪の色が全く違うため双子だと疑われていない。ただ、お嬢様が姉妹に憧れてメイドに懐いているようにしか周りには見えないようだ。
「一緒にお出かけしよ〜?」
「…旦那様に許可を取ってから…」
「やった〜♪」
まるで花が咲くような明るい笑顔を浮かべたルジェに、クトは慈しむように抱きしめて頭を撫でる。それにルジェは首を傾げるが、すぐに気持ち良さそうに目を細める。暫くそうした後、二人は許可を貰って外に出ることにした。
「今日はどちらに?」
「ん〜とね、お姉様のお洋服を探そうと思って♪」
「私の?」とクトは疑問に思う。それに対して、ルジェは嬉しそうに微笑む。
「だってお姉様、いつもメイド服で可愛らしいお洋服とか持ってないでしょ?それじゃ好きな人が出来た時に苦労するよ?」
「…私は、お嬢様さえいればそれでいいので…」
「それでも、ちょっとくらいお洒落してもいいんじゃない?」
二人はそんな他愛もない話をしながら、楽しそうに街を歩く。だが…
「チッ…」
そんな二人を見て、恨めしそうに睨む一人の男がいた…
【精霊信仰】
・約7200年前までは広く信仰されていた宗教。しかし、地方へ広がるうちに内容が改変されていった。さらに、信仰とは名ばかりの搾取行為をする人達が増え始めた事で、精霊の怒りを買って教会本部が消し炭にされたのをきっかけに精霊信仰は解体された。
だが、地方ではまだ信仰している地域もある。尚、双子が不吉なものというのは聖典のどこにも記されていない。つまり、広がっていくうちに歪曲された教えである。




