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異世界で【天職:プレイヤー】やってます!  作者: フユルト
第六章〜:機械と悪夢と暗闇
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第77話 帝王城②


…………



回避しようとすれば脚で蹴り飛ばし、ガードするならそれすらも粉砕する勢いで刃を振るい、隙を晒したなら壁に叩きつけ、怯めば空中へ蹴り上げてからの踵落としで地面に平伏させる。



「ほらほら〜、あれだけイキってたのに…この程度なの〜?」



「ぐぎぎぎ…ッ!!!」



もはや帝王城の一部が崩壊し、3階4階を突き抜けて機械仕掛けの男が宙を舞う。それを赤い軌跡を目に走らせて追っているのは何千年も生きているとは思えないほど可愛らしい少女の姿をしたルジェだった。



「まだまだいくよ〜?」



ルジェの戦闘スタイルは相手を殺すことに対して特化している。実際に、彼女が縦横無尽に振るっている二振りの斧である【メメント・モリ】は、“相手に死を押しつける”という極めて特殊な能力がある。これは、相手が例え何であろうと世界がそれを“生き物である”と認識さえすればあらゆる生命を殺すことができる。



しかし、目の前の男は死なない。それは、世界が目の前にいる男を生き物だと認めていないからということになる。現代的にいえば機械にその人の記憶を移しただけのデータなのだが、そんなことを彼女は知らない。



では、彼女は目の前の男に勝てないのか?



否、負けることはない。確かに、ルジェは殺すことに特化しているが、生きていないゴーレムやアンデッドとだって戦ったことくらいはある。その対処法は簡単で…



「な、何故だッ!?何故オリハルコンで創られた我が肉体をこうも簡単にぃーーーッ!!!」



「そんなの簡単だよ…?」



ルジェは、その顔にいたずらっ子のような表情を作り…



「ーーー相手が硬いなら、それ以上の力でぶっ叩けばいいんだよ♪」



『シンプル・イズ・ベスト』



それこそが、ルジェという少女を説明する上で一番適切な言葉だ。例えどれだけ賢くて算術や政務が出来ようが、そんなもの竜の吐息だけで呆気なく蹴散らせる。純粋な暴力の前では、それ以下の力しか持たないものは等しく打ち砕かれる。



立ち上がろうとした片足を払い除け、バランスを崩して地面に着く前に顎を蹴り上げてのけ反らせて、胴体に踵で蹴りを入れてぶっ飛ばしながらそれを越える速度で移動し、斬り刻む。



戦いで勝つ為に必要なのは、相手よりも強く、速く、そして何もさせない事だ。百発百中のスナイパーも、行動を起こさせる前に殴り飛ばし、蹴り上げ、死ぬまで斬り裂けば負けるのだ。



「させないよっ!!」



「グオオッ!?」


地面に触れようとした手をメメント・モリで弾き、膝蹴りで身体を浮かし、随分と広くなった空間でまるでスーパーボールのように跳ね回りながら宙に浮いた男をすれ違いざまに何度も攻撃する。下から上、上から下へ、更には斜め、横方向へも縦横無尽に動き回る。自身の配線を伸ばした瞬間に斬り飛ばされ、打撃、刺突、斬撃がその身を襲う。



「調子にぃ…乗るナアアァーーーーッ!!!!!」



男が絶叫するように周囲へ衝撃波を飛ばしたことにより、ルジェはノックバックを受けて態勢を崩したが、身体を捻って地面にトンっと綺麗に着地する。



「…」



「ハァッ…はぁっ…」



ルジェは一切息切れを起こしていないのに対して、男は最早虫の息であった。呼吸を行なう事に身体の彼方此方から火花が出てジジジッと嫌な音が鳴る。



「ガキがッ!!ぶち殺し…ッ!?」



一瞬にして接近したルジェの蹴りを、咄嗟に腕でガードするが、少女はすぐに身を屈めて足払いをして、男の態勢をまた崩しながらがら空きの腹に対して拳を叩き込んで吹き飛ばす。



「ぶふぇっあァッ!?」



男が背中から壁に激突した直後、ルジェが投げ飛ばしたメメント・モリが男の腕を固定するように、壁にめり込ませながら突き刺さる。そこへ、カツ…カツ…と靴の音を鳴らしながら、調子を確かめるように自身の肩に手をあててグルグルと回した後、拳をポキポキと鳴らす。



「化け物が…ッ!!」



「ーーーッ…ちょっとだけ、本気出すね?」



男の言葉に、一瞬真顔になった少女だったが…すぐに笑みを作ると、“機械仕掛けのガントレットで覆われた”拳を突きつける。



「無理だったら手を上げてね♪…ッ!!」



両腕をメメント・モリで固定されているのに、どうやって手を上げるのかという疑問が男の頭に浮かんだ直後、ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!っと、まるで掘削するかのような金属音を響かせながら、何度も何度も少女の両腕の拳が振るわれる。だが、男の身体が凹み砕けていくだけで、壁を突き破る事はない。やがてガントレットが煙を上げてヒビが入り始めた頃、少女はやっと腕を止める。



「ウガッ…ギギァ…」



最早何とか原型を保っている男は見るに堪えない。だが、少女はまだ満足していないようで…



「う〜んっと、確か…」



そう言いながら、少女は男の首を掴んで壁から無理矢理引き剥がすと、片腕の拳を握り、肘を後ろに下げて構えをとる。



「きっ…キザマ…なぬぼ…ッ」



「《再展開(リリース)》」



直撃。下から上へと振り上げられた拳は、男の腹に叩きつけられた瞬間、膨大な衝撃波を放って吹き飛ばした。男は帝王城の天井を次々にぶち破り、空へと打ち上げられる。



少女が使っていたガントレットは、ミーシャに会いに行ったついでに、アルルの研究所のをパクっていった時の代物である。



試作品だが威力は絶大で、ガントレットを経由した衝撃を吸収して蓄積していき、装着者の任意で蓄積した衝撃を次に拳に当てた者へ解放するという機能が取り付けられている。



…だが、その反動が自身の腕にも掛かってしまうという欠点を抱えているため、自分の腕が粉砕する可能性がある。しかし、ルジェにとっては無視できる範囲であった。



そして忘れてはならないのが、それが両腕に着けられているという事…



「もう一発行くよ〜?」



「ヴゥァ…ッ!!」



再展開(リリース)》。そこそこ本気で跳躍したルジェが振るった拳が男の背中にクリーンヒットし、一瞬にして空中から地上へ送り返され、帝王城に激震を走らせた。



「…チェック・メイト、だね?」



「くっ…くクグッ…」



粉々になったガントレットを捨て、メメント・モリを男に突きつける。地面に巨大なクレーターを作り、胴体から下が千切れ飛んで死に体となった男は、果たして嗤っていた。



「…何が可笑しいのかな?」



「バ、馬鹿め…オまエが、ここコの帝王城ニハ、入った時点で、ワワタシノ、勝チだァッ!!!」



「ーーーッ!?」



直後、地面に入ったヒビの隙間から光が漏れ始めーーー




…そして、途轍もない光と爆発音と共に帝王城が一瞬にして消え去り、空を昼間のように明るく染め上げた…




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