第54話 氷華の国
どうも、新しい素材を手に入れると嬉しいミーシャです♪
今は氷華の国に入る為に列に並んでいる最中です…
「う〜…長いです…」
私の前には、色んな種族の人でできた長蛇の列が氷華の国を取り囲む巨大な壁の入り口へと続いています。
『仕方ないですよ、この時期は確か武道大会が開催されるので、観戦や大会に出場する人で溢れかえってますから』
たとえそうだとしても、まだ見ぬ食材や観光地が私を待っているというのに…むぅ〜、もどかしいです。そんな風に思っていると、騎士風の男の人と、青いローブを着た魔道士風の女の人が此方に駆け足で向かってきました。
「あの〜、ミーシャさん?ですよね?」
「え?はい、そうですけど…」
…???何で私の名前を知ってるんですか…?
「でしたら、京の都のあの人から紹介状を預かってたり…?」
ん…?あ、そういえばそんな物も渡されてたような…?そう思ってインベントリから紐に結ばれた紙を取り出して女の人に渡すと、それの紐を解いて内容を確認しました。
「鑑定しました、間違いなくあの人が書いた物です」
女の人はそう言ってその紹介状?を騎士の男に渡しました。それを受け取ると男の人は急いで戻っていきました。
「それでは、行きましょうか」
「え?でも、列に並ばなきゃ…」
「いえ、あの人の紹介ならば列に並ぶ必要はないですよ?」
話によると、ある程度の地位にいる人やそういう人に問題が無い事を保証されていれば、この長蛇の列に並ぶ必要はないそうです。なら、みんな地位の高い人に保証してもらえばいいと思ったのですが、何か問題を起こすと保証した人も色々と責任を被ることになるのでむやみにできないんだそうです。
「ちょっと待てッ!!」
え、面倒事の予感…そう思って振り返ると、一人の冒険者風の男性がいました。
「何ですか?」
「何ですかじゃねぇだろッ!?何でソイツが列に並ばずに入れるんだ!?お前らの職権乱用だろッ!!」
「はぁ…この人はある程度の地位の人に実力となんの問題が無いことを保証されているので、並ぶ必要がないんですよ」
「実力ぅ?そんな小さいガキの何処に実力があるんだよぉ?」
「はぁ…では、試合をしてみれば分かるのでは?…申し訳ありませんが、少し遊んであげてくれませんか?」
えぇ…私自身はそんなに強くないんですけど…
『マスター、ここは変身魔法の使い手という事にして、私を憑依させれば…』
おぉ、その手がありましたッ!!ヴェスタちゃんは相変わらず冴えてます。
「あの、私は変身魔法を使って戦うんですが…」
「あぁ?別にいいぞ?どうせちっせぇ虎の子供とかだろ?ウキャキャッ!!」
カッチーン…あ〜、無性にイライラします…今すぐアイツの顔面に水魔法ぶっ放してもいいですかね?
『落ち着いてください、相手の首から上が吹き飛んじゃいますから…それで、“例の剣”を使いますか?』
ん〜、本当はまだ使わない予定だったんですが、相手のあの斧…魔法が付与されてますよね?ムカついたので使っちゃいましょう。それじゃあ…ヴェスタちゃん、お願いします…
「それでは、行きますよ?」
「へ、髪と目の色が変わっただけじゃねぇかッ!!」
男は背中に背負っていた斧を両手で握る。すると、紅色の炎が刃を覆うようにして出現した。
それに対して、ヴェスタは聖剣を抜かずにインベントリから一振りの剣を取り出した。それは、まさに透き通るような青色の氷剣。そして、それは氷樹の森を知っている者なら決して作る事の出来ないと思われていた代物。故に…
「は、はっ…そ、そんな訳ねぇ、どうせ偽物だろっ!?」
故に、紛い物だと思い込む。その剣から発せられるこの世の魔力を拒絶する力を感じようとも…だ。
「オラァッ!!」
男は大きく振り被った斧をヴェスタ目掛けて振り下ろす。だが…ヴェスタは回避せずに、その氷剣を炎を纏う斧の刃に合わせて振り抜いた。
「…へ?」
…たったそれだけで、男の斧はまるで水に通したかのようにすっと、流れるようにして氷剣が斬り裂いた。そして、呆けている男の首にその刃が触れる寸前で止めた。
「これで、私の実力が分かりましたよね?…それでは、行きましょうか」
「は、はい、そうですね…」
ヴェスタは、呆然としている男の言葉を待たずに、そう言ってあるき出した。魔導士風の女性は、〈鑑定〉スキルを持っているが故に気づいていた。刃が触れ合った瞬間、男の斧に付与されていた魔法が消滅した事と、そして何より…
(あれは…いえ、有り得ないっ、存在する筈が…)
ヴェスタが握って振るった氷剣…それは正しく、【氷樹の剣】であるという事実を知ってしまったのだから。
Q氷樹って結局何なの?
Aそれを説明するには氷樹と魔力についての深い理解が必要。
まず、前の話にも出たとおり、生前のヴェスタちゃんが本気で斬りかかっても斬れなかった理由は、氷樹が“魔力を拒絶するという性質”を持っているから。ミーシャちゃんがいる世界の人や物質には量は異なるものの魔力が含まれている。それに対して氷樹は魔力を拒絶、言い換えれば反発するので、仮にその世界で最強の金属を使った斧で斬ろうとしても絶対に斬れない。
では、何故ミーシャちゃんが斬れたのか?それは勇者のみが使える聖魔法の奥義である【ホワイト・アウト】のあらゆる物質を聖なる魔力に置換するという能力だったから。実際には斬ったというより聖なる魔力に侵食された部分が消失したから取れちゃったというのが正しい。
Q何で付与した魔法が消滅してんねん
Aそれは、ミーシャちゃんが氷樹に対して【アイテム・クリエイト】を使って作成した影響。ただの魔力を拒絶するという性質が少し変わって刃に触れたものの魔力を弾くという性質に変化した為。
魔法が付与された武器の魔力を弾く事によって、武器の内部の魔力が氷樹の剣の刃が触れた部分から逃げるようにして離れる為、付与された魔法が乱れて結果消失してしまうという理屈。
簡単に言えば、真珠のネックレスが魔法、真珠自体が魔力とした場合、氷樹の剣によって魔力である真珠が吹き飛んでしまい、魔法である真珠のネックレスは魔力である真珠が無くなってしまった為に真珠のネックレスではなくなった…つまり魔法ではなくなったからという理屈。
Q何でヴェスタちゃんが生前の時に作られなかったの?
A斬り倒したんだ…で?加工って誰がするの?
Qヴェスタちゃんに加工させれば?
A勇者はそんな暇じゃねぇよ、というか聖剣より強いわけ?そんなんさせるよりさっさと魔王と四天王ぶっ倒して世界平和にしてくんね?…って当時の人達は思ってた。
Q氷樹の剣って聖剣より強いの?
【ホワイト・アウト】がなければぶっちゃけ氷樹の剣の方が強い。
氷樹の剣は魔力を拒絶するっていう性質上、魔法とか付与できないけど、付与魔法なんてなくても強い。何なら魔王にぶっ刺せば魔力を使えずに物理攻撃しか出来なくなるから多分完封できた。まぁ、ミーシャちゃんが【アイテム・クリエイト】を使って作ったから性質が変化して魔力を弾くっていう性質になったからで、ヴェスタちゃんが作っても性質は変化しなかったし、完封は出来なかった。(生存ルートが無いとは言っていない)




