第112話 選択
「ヴェスタちゃん、大丈夫ですか?」
「ミーシャさんっ…ミーシャさんっ!!」
ヴェスタちゃんは勢いよく私に抱きついて、声を震わせています。ちょっと不謹慎かも知れないけど…なんか新鮮だなぁ〜…
「わ、私は…うぅっ」
「ヴェスタちゃん、落ち着いて…」
なだめるようにヴェスタちゃんの背中を撫でて…ちょっと、えづくのはやめてくださいね?位置的に私の頭からかかりそうなので…
「…落ち着いた?」
「はい…もう大丈夫です…」
うーん、言葉ではそう言ってるけど…私が離れたらぽっきりと折れてしまいそうな雰囲気がするんですよね。
その時、暗闇からヴェスタちゃんに似た姿をした幼い少女が現れました。
「うぅ…」
『…』
少女は何も言わず下を向いて俯いているだけで、特に何かしてきたりはありません。それでも、ヴェスタちゃんは怖がって私の背中に隠れてしまいます。
「…ヴェスタちゃん、ここから出るには過去を受け入れる必要があるんです…できますか?」
「それは…」
ヴェスタちゃんはそれを聞いてたじろいでしまいます。
『…』
ん?というか…なんで向こうのヴェスタちゃんは喋らないんですか?私の時は結構会話したんですけど。
「無理、です…私には…」
「う〜ん、そうなると…」
…一応、対話をせずに出る方法はあるんですけど…いや、今さっきぶち破った上から出るだけなんですけどね?
問題は、そんな方法で逃げて大丈夫なのかってことなんですけど…うん、嫌な予感しかないですよね?でも、ヴェスタちゃん辛そうだし…しょうがないか。
「ヴェスタちゃん、私が開けた穴から出ましょう。そうすれば対話する必要はないので…」
「はい…」
………
……
…
私は、ミーシャさんの言葉に甘えて、私とは対話をせずに逃げることに決めました。どうしても、私は私と話すのが堪らなく怖かった…
『…』
…目が合った。
暗闇の中の私は無表情であったが、瞳から一筋の涙が流れていた。
『…』
声は聞こえない。れでも、その口の動きは…
「…っすみません、ミーシャさん…」
「ヴェスタちゃん!?」
気づいたら、私はミーシャさんの手から離れて彼女の元へ駆け出していた…




