第108話 愚かな道化1
…人生で初めて、武器を握った…それから、その手で目の前の魔物を殺した…それからもなだれ込んでくるモノを斬って斬って斬って…
…全部斬ったあと、初めは安堵した…その途端にその手に伝った感触が押し寄せてくる。それは、嫌悪感と罪悪感、そしてーーー
………
……
…
その身体が揺らめいたと認識した瞬間、私は聖剣の位置をずらす。直後、両手に鈍い衝撃が伝わってくる。
「ぐっ…ハァッ!!」
『…』
私は聖剣に力を込めて、防いでいた朽ちかけの剣を弾いてそのまま返す刃の勢いでーーーッ!?すぐさま地面を転がり、頭上を通り抜けた剣を躱して後ろに下がって距離を取る。
『ふむ…』
「ふーっ…」
まさか…弾く瞬間に剣を引いて大勢を崩させた後に、すぐさま首を狩りにくるとは…「上半身を狙われた時は…まぁ、取り敢えず転がっとけ」という師匠の教えが無ければ死んでいたな。
「…会話が出来るのなら、お互い話し合いをするべきではないか?」
『話し合い…?くふふっ、本気で言っているのか?』
「ああ、少なくとも私達は同じ言葉を使っている…ならばーーー」
『ーーー駄目だ』
予備動作すら認識出来ない程の高速の突きを、ヴェスタは勘を頼りに回避する。
『駄目だダメだ、純粋であまりにも単純な君は…ここで死んだほうがいい…』
「何を言って…っ!?」
再度振るわれた剣を防ぎながら、ヴェスタは説得しようと試みる。
言葉が通じるから、何だと言うのだ…どれだけ言葉を並べようとも、邪な者達には何の意味も持たないというのに…




