運命と感情の狭間 【月夜譚No.131】
姫である彼女の魂は、一体どんな色をしているのだろう。花が綻ぶような笑顔をいつも湛える彼女のことだ、きっと春に咲く花弁のようにとても綺麗な色なのだろう。
洋館の二階、テラスに出た青年は装飾の施された手摺りに凭れて、そんなことに思いを馳せていた。ぼんやりとする視線の先では、夜空に散らばった星々が瞬いている。
彼女と出会ったのは、数か月前のことだ。町の様子が見たいと城を抜け出していたところを、偶然出くわした。青年が町を案内することになったのだが、色々なものに興味を持って、くるくると動く瞳が小動物のようだった。その時の記憶が、もう既に懐かしい気がする。
青年は溜め息を吐いて、目を閉じた。
会った瞬間に、気がついた。
彼女は、自分にとって――魂を狩る対象なのだと。
青年の正体は、悪魔だった。人間の魂を狩ることが生業。その運命から逃れることはできないし、逃れようなどと考えたこともなかった。
だが、今は――今は、彼女の魂を狩りたくないと強く思うのだ。
閉じた瞼の裏が熱くなったのを感じて、青年は眉を顰めた。