偽物勇者の魔王討伐道中
「行くぞ、みんな!!」
「「「「おう!」」」」
俺たちは一斉に敵へと向かう。対して目の前の敵――漆黒の龍は口から黒炎を吐き出す。
「シグマ!」
「よっしゃ、任せろぉ!"ブラインドシールド"!!」
黒炎の前に薄透明の盾が張られる。黒炎はその縦に遮られ、俺たちの元には辿り着かない。
「水よ、眼前の敵を撃ち払え!"ウォーターランス"!」
「光よ、眼前の敵を撃ち払え!"シャイニングランス"!」
後衛のレンとミラが魔法を黒龍にダ放つ。翼を狙ったその攻撃は見事に黒龍の翼を穿つ。
グギャァァァァァァァ!!!
黒龍が大きな咆哮をあげる。どうやら痛みを感じているようだ。
「ユア、畳みかけるぞ!」
「分かった!」
前衛の俺とユアは左右から黒龍に向かっていく。俺は黒龍の意識をこっちに向けるために小さめの魔法を放つ。
ギャァァァァォォォォ!!!
うまく黒龍の意識をこっちに向けることができたので、目線でユアに合図する。それに頷きで答えたユアは一気にスピードを上げて黒龍へ向かっていく。
「古心流 空天穿華」
ユアの剣が黒龍の左肩を斜めに一閃する。切り口からは血が溢れ出し、黒龍も苦しそうだ。
グリャァァァァ!!!
そうして怯んだ隙にトドメを刺すため、俺は黒龍へ接近する。
「付与 破滅の閃光」
俺は特殊な魔法を剣に付与し、そのまま黒龍の首に向かって勢いよく斬りかかる。
光り輝く剣が黒龍の太い首を一刀両断にする。こうして無事に俺たちは黒龍を討伐した。
「やったな、ルイス!」
「ああ、今回も何事もなく討伐できた。みんなのおかげだ、ありがとう」
「まあ、ほとんどルイスさんが倒しましたけどねー」
「僕らはあくまでサポートだよ」
「さすが勇者だな、ルイス」
みんなは口々に俺を褒めてくれる。そう、俺は神に選ばれた勇者であり、みんなは勇者のパーティーメンバー……ということになっているが、実はそれには秘密がある。
何を隠そう、俺は勇者ではない。神に選ばれてなんかいないし、勇者の力だって使えない。使えるのは禁術だけだ。
このことをみんなは知らない。というか、知ってる人なんてほぼいない。色々あってこうなってしまった。
これは偽物勇者のルイス=カートリスとその仲間たちの魔王討伐の物語である。