隠れオタクの日常
「はぁ、」
そうため息を漏らしたのは、私...田中紗良は学校一の美少女と言われている高校2年生の女子だ。
私には強く望んでいるものがある。
それは......ラノベにいるような陰キャだけど、顔はそこそこいい感じの男子とのラブコメのような恋愛だ。
ここまででわかる通り私は普通じゃない。
私は隠れオタクだ。周りが私を可愛い可愛いとはやしたてるせいでオタクということを周りに言い出さない。
それに私は自分が他の人より顔が整っているのは自覚している。だからこそ望んでしまう。ラノベのラブコメのような恋愛を!!!
なんでそんなにラノベのラブコメのような恋愛を望むかって?
だってそれはヒロインが可愛くないと成り立たないからだ!私はオタクだが学年一の美少女という称号を手に入れた。
そんなものを手に入れたら望むしかないじゃない!!!
ラノベのラブコメのヒロインはみんな幸せだと思う。だって陰キャでも心の底から愛することのできる男性と出会ったのだから。
オタクの私が手にしたこの学年一の美少女という称号を使って必ず手にしてみせる!私を心の底から愛してくれてラノベのラブコメのような恋愛をさせてくれる彼氏を!!!
どうして私がここまでこじらせたのかというと......
それは中学3年生の時。部活も引退し、受験勉強の合間にどうやっていい具合に時間を潰せるか考えていた時。オタクだった友達が一冊のラノベを貸してくれた。
その一冊で私の世界はわかった。
漫画やアニメは人並みにはみていたがラノベの頭の中でイメージして話を進める快感に私はたった一冊で虜になった。
それからは周りにバレないようにラノベや漫画を買い、アニメを見まくり。いつの間にか立派な隠れオタクになっていた。
そして今現在。部活が終わり家に帰っている。
ラノベような恋愛を望むなら私は帰宅部にならないといけなかったのかもしれない。だが、県で優勝までしたテニスを自分の叶わない妄想のために辞めることは出来なかった。
そして私をヒロインにしてくれるヒーローが現れないまま高校2年生の夏休み前になり。
「はぁ、」
また、今日何度目かのため息を漏らしたのであった。