水雷屋の才能
魚雷一本当てるのは至難の業だ。
方位、射角、艦の速さ、動き方、天候、波だって影響してくる。
これにプラスして絶好の撃つ場所を導き出すため、面倒くさい計算をする。
なんで、こんなに面倒なことをしてまで水雷屋になったのか。
それは、一撃の威力は戦艦砲弾以上の破壊力を持っている。
ただし、命中率は低い。
今日もその命中率を少しでも上げるために訓練をする。
「面舵二〇度、標的まで距離三〇。魚雷発射用意」
「ヨーソロー」
艦が変針する。
標的に対して艦が横を向く様に操艦される。
艦長は悪い操艦はしていないし、基本的なことを繰り返している。
あとは水雷屋の仕事。
場は整えてもらった。
「魚雷発射管旋回完了」
「訓練魚雷発射!」
一本だけ圧縮空気と共に発射される。
着水と同時に魚雷は走り出す。
標的に向かっていると思うけど、やはり、命中の判断は標的の乗員のみだ。
命中すれば赤い旗が上がるが……。
「まだ、か」
「着弾までは距離的に約三〇秒ほどでしょうか」
三〇秒たっても一向に旗が上がらない。
ということは。
「外れたか」
「ですね」
「魚雷の命中率はすこぶる低いな。訓練でもどうしてもこればかりは……」
「精進します」
水雷屋としては悔しい限りだ。
でも、訓練はこれからどんどん続く。
感覚を掴んでおけばよいか。
艦長も付き合ってくれるというし。
それからも技術向上の訓練は続いたが、向上は見込めそうにないらしい。
これが才能ってやつか……。